世界一周路線

世界一周路線とは

世界一周路線とは、単一の航空会社が、出発地となる空港から地球を一周し、再び出発地に戻る定期路線のことを指します。かつては、パンアメリカン航空や日本航空などの主要な航空会社が、複数の寄港地を経由する世界一周便を運航していました。

世界一周便の歴史

1960年代には、パンアメリカン航空、日本航空、英国海外航空、トランス・ワールド航空、カンタス航空といったフラッグキャリアが、世界一周便を運航していました。これらの便は、複数の都市を経由しながら世界を一周するものでしたが、必ずしも同一の機材で運航されるわけではありませんでした。

しかし、航空機の性能向上により直行便が増加し、世界一周便の必要性が薄れていきました。また、航空会社間の競争激化も収益悪化を招き、世界一周便は衰退していきました。2013年以降、旅客便として世界一周路線を運航する航空会社は存在しませんでした。

近年の状況

近年、ウクライナ侵攻によるロシア領空の迂回や、低燃費エンジンの登場による旅客機の航続距離の増大など、新たな状況変化が起きています。これにより、極東アジアと欧州間を運航する便が、偏西風を利用した効率的な経路を飛行するようになり、事実上の世界一周路線として運航されるケースが増えています。例えば、欧州向けは太平洋、アラスカ、カナダ北極圏、グリーンランド、大西洋を経由し、極東アジア向けは黒海、中央アジア、中国を経由する東回りの経路が用いられます。

主要航空会社の世界一周路線例

シンガポール航空

シンガポール航空は、かつてシンガポール - ニューヨーク/ニューアーク便とシンガポール - フランクフルト - ニューヨーク便を別便として運航していました。しかし、超長距離機材A350-900ULR型機の導入により、2020年11月9日からジョン・F・ケネディ空港直行便（SQ23/24）を開設しました。この路線は、定期旅客便として世界最長路線であり、事実上の世界一周路線としても機能しています。また、ウクライナ侵攻後のロシア領空迂回により、偏西風を活用した東回りの航路を往復で利用することで、名実ともに世界一周路線となるケースもあります。

日本航空

日本航空は、1967年に日本およびアジアの航空会社として初の、そして日本の航空会社として唯一の世界一周便を就航させました。東京 - ロンドン間の南回り欧州線をニューヨークまで延伸し、太平洋経由の東京 - ニューヨーク線と接続することで世界一周路線としていました。

しかし、大西洋線の利用率が低迷し、1972年の連続事故により機材を失ったことで、同年12月に大西洋線から撤退し、世界一周線は5年余りで幕を閉じました。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、JALは安全上の観点から欧州便の欠航を余儀なくされました。その後、南回りの経路の安全性が確認されたことから、復路を南回りに切り替え、偏西風を活用した短縮化に成功しました。この結果、往路は北回り、復路は南回りの経路となり、事実上の世界一周路線が復活しました。

往路: 東京/羽田（→北米アラスカ→カナダ北極圏→グリーンランド→アイスランド）→ロンドン/ヒースロー
復路: ロンドン/ヒースロー（→黒海→中央アジア→中国→韓国）→東京/羽田

日本貨物航空

日本貨物航空は、西行きの片道のみ大西洋路線で運航することで、世界一周路線に就航していました。しかし、2019年12月24日をもって大西洋区間を休止し、現在はアメリカ側・ヨーロッパ側でそれぞれ折返し便としています。

パンアメリカン航空

パンアメリカン航空は、1947年6月に世界初の自社運航による世界一周便を開設しました。ダグラス DC-4Bを皮切りに、その後ダグラス DC-6やボーイング707、ボーイング747などの機材で1980年代まで1日1便運航していました。

トランスワールド航空

トランスワールド航空は、東京への寄港権利がなかったため、那覇空港に寄港していました。

英国海外航空

英国海外航空は、世界一周航路に就航していたボーイング707型機が、1966年に富士山麓に墜落する事故を起こしています。

ニュージーランド航空

ニュージーランド航空は、2013年3月3日まで、オークランド - ロサンゼルス - ロンドン（ヒースロー）便とオークランド - 香港 - ロンドン（ヒースロー）便を運航しており、事実上単一の航空会社による世界一周路線と見なされていました。

世界一周航空券

現在では、ワンワールドやスターアライアンスなどのアライアンスが、加盟航空会社の路線を組み合わせた世界一周航空券を販売しています。また、シンガポール航空も同様の航空券を販売しており、これらがかつての世界一周路線に代わるものとなっています。

まとめ

かつて多くの航空会社が運航していた世界一周路線は、直行便の増加や競争激化により衰退しましたが、近年の情勢変化により、事実上の世界一周路線が復活しています。現在では、アライアンスによる世界一周航空券が主流となっていますが、航空会社の路線の組み合わせによって、様々な形で世界一周の旅を楽しむことができます。

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