世界創造紀元

世界創造紀元：東ローマ帝国の独自の紀年法

東ローマ帝国（ビザンティン帝国）では、独自の紀年法として「世界創造紀元」が用いられていました。これは、西暦とは異なり、天地創造を元年とする暦法で、世界暦、あるいはビザンティン暦とも呼ばれています。

東ローマ帝国では、当初は執政官の名で年を数えるローマ時代の伝統を踏襲していましたが、執政官の廃止後、15年周期の会計年度であるインディクティオが使われるようになりました。しかし、インディクティオだけでは特定の年を特定しづらいという問題点がありました。そのため、より明確な紀年法として世界創造紀元が988年、バシレイオス2世によって導入されたのです。帝国滅亡の1453年まで公式に使用され、それ以前から一部で使用されていたという説もあります。

世界創造紀元は、実質的にはユリウス暦を基にしていますが、月名はギリシア語に翻訳され、1年の始まりは9月1日とされていました。元年の西暦換算は紀元前5509年から5508年頃とされ、旧約聖書の創世記における天地創造の年代を逆算して設定されたと考えられています。なお、インディクティオも9月始まりでした。東ローマ帝国では、462年頃に1年の開始日が9月1日に変更され、537年には公式に9月1日が新年の始まりと制定されました。しかし、10世紀に至るまで、歴史家の中には3月25日を新年の始まりとして紀元前5508年を元年とする者もいました。

閏年の設定はユリウス暦と同様で、2月24日が2回設けられることで行われていました。また、ローマ帝国支配下にあった東地中海世界では、ラテン語の月名はギリシア語に翻訳されて使用されていました。

世界創造紀元における重要な年

元年：天地創造
4755年 (紀元前753年)：ローマ建国
4841年（紀元前667年）：ビュザンティオン建国
5502年（紀元前6年）頃：イエス・キリスト生誕
5541年（紀元後33年）頃：イエス・キリストの刑死と復活
5838年（330年）：コンスタンティノポリスがローマ帝国の都となる
5888年 (380年)：キリスト教がローマ帝国の国教となる
5903年 (395年)：ローマ帝国の東西分割
6045年 (537年)：ユスティニアヌス1世が世界創造紀元による年代表記を義務付ける
6118年 (610年)：東ローマ帝国の公用語がギリシア語に変更
6496年（988年）：世界創造紀元が公式に使用開始
6562年 (1054年)：東西教会の分裂
6712年 (1204年)：第4回十字軍によるコンスタンティノポリス陥落
6769年(1261年)：東ローマ帝国再建
* 6961年 (1453年)：東ローマ帝国滅亡

東ローマ帝国の建国から滅亡までを世界創造紀元でみると約2000年となり、東ローマ人の歴史観が反映されています。東ローマ帝国の国教であった正教会では、帝国滅亡後も世界創造紀元が長く使用され、ロシアでは1700年頃まで使用されていました。現在でも一部の正教会で用いられているケースがあります。2024年は世界創造紀元7532年から7533年に相当します。

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