世界崩壊の序曲

『世界崩壊の序曲』（原題: When Time Ran Out）は、1980年に公開されたアメリカのパニック映画です。アーウィン・アレンが制作、ジェームズ・ゴールドストーンが監督を務め、ポール・ニューマンが主演しました。南太平洋の架空の島、カラルー島を舞台に、火山噴火の危機に立ち向かう人々の姿を描いています。

物語は、油田採掘を行うハンク・アンダーソン（ポール・ニューマン）が、島のマウナ・タイ火山の噴火の兆候に気づくところから始まります。彼は、島の有力者であるボブ・スパングラー（ジェームズ・フランシスカス）に警告しますが、軽くあしらわれてしまいます。島には、ホテル王シェルビー・ギルモア（ウィリアム・ホールデン）や、ハンクの元恋人ケイ・カービー（ジャクリーン・ビセット）らも滞在しており、それぞれが複雑な状況に置かれています。ホテルには、他にも、ボブの妻ニッキー、横領容疑者のフランシス・フェンドリー、彼を追う刑事トム・コンティ、元綱渡り師ルネ・バルデス夫妻などが宿泊していました。

ハンクとケイがピクニック中に火山が噴火し、事態は急変します。ハンクはホテルに避難した人々を島の反対側へ避難させようとしますが、ボブはホテルに留まる方が安全だと主張。大多数がボブの意見に従う中、ハンクは、ケイ、シェルビー、フランシス、トム、ルネ夫妻、ホテル従業員、島の住人らと、島の裏側への避難を開始します。

本作は、1970年代に流行したパニック映画ブームの中で制作されました。『ポセイドン・アドベンチャー』や『タワーリング・インフェルノ』を手掛けたアーウィン・アレンが、本作では、1902年のマルティニークのプレー山大噴火を題材にしたドキュメンタリーを原作に、舞台を現代の南太平洋の島に移して映画化しました。脚本は、アカデミー賞受賞経験のあるカール・フォアマンとスターリング・シリファントが担当。音楽は、ラロ・シフリンが手掛けました。

出演者には、ポール・ニューマン、ウィリアム・ホールデン、ジャクリーン・ビセット、ジェームズ・フランシスカス、アーネスト・ボーグナイン、レッド・バトンズ、ヴェロニカ・ハメル、バージェス・メレディスら、パニック映画の常連も含む豪華なオールスターキャストが集結しました。2000万ドルの巨費が投じられましたが、興行収入はわずか170万ドルに終わり、アレンは映画制作から撤退することになりました。

作品の評価は非常に低く、ストーリーの貧弱さや、スペクタクルシーンの迫力不足が指摘されました。特に、クライマックスの崩壊した橋を渡るシーンは、スタジオ撮影の安っぽさが目立ちました。批評家からは「史上最低のパニック映画」と酷評され、主演のニューマンでさえ、出演を後悔する発言をしています。撮影はハワイ島のコナ・サーフ・ホテル（現在のシェラトン・ケアウホウ・ベイ・リゾート＆スパ）で行われ、火山噴火の映像には、キラウエア火山のものが使用されました。

本作は、豪華なキャストとスタッフを揃えながらも、その出来栄えから「史上最低のパニック映画」とまで呼ばれる、稀有な作品として映画史に残っています。

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