丙辰丸の盟約

丙辰丸の盟約についての詳細

丙辰丸の盟約は、1860年（万延元年）の9月、軍艦「丙辰丸」の艦上で長州藩と水戸藩の士族たちによって結ばれた密約です。この盟約は、「成破の盟約」または「水長盟約」とも知られています。両藩の士族は、幕藩体制に対する改革を急速に進めることを目指しており、その具体的な計画は、両藩の役割分担に基づいて設計されていました。

盟約を結んだ者たち

この密約に関与した主な人物は、長州藩の松島剛蔵（「丙辰丸」艦長）、桂小五郎、そして水戸藩の西丸帯刀、岩間金平、園部源吉、さらに結城藩士の越惣太郎です。この盟約の成立には、佐賀藩士の草場又三が仲介役として重要な役割を果たしました。特に、長州藩の艦船である「丙辰丸」での協議は、秘密保持の目的がありました。

盟約の内容と目的

この盟約の主な目的は、両藩が連携して幕政改革を迅速に推進することでした。具体的には、水戸藩が「破」を、長州藩が「成」を担う役割として、それぞれの役割分担を明確に定めました。ここで「破」とは、世の中に動乱を引き起こし、その混乱を利用して改革を進めるという戦略を指しています。一方、「成」はその混乱を経て改革を遂げるプロセスを意味します。

重要なのは、幕政改革を志向している点であり、幕藩体制そのものを破壊する討幕運動を意図しているわけではありませんでした。しかし、実際にはこの協定が両藩の行動指針に大きな影響を与えることはありませんでした。

盟約後の展開

両藩の内部には、尊王攘夷派と開国佐幕派の間での権力闘争が存在していました。この結果、長州藩では尊王攘夷派の「正義派」と開国佐幕派の「俗論派」の対立が繰り広げられましたが、結局開国佐幕派の長井雅楽の策が藩の主流となりました。その後、長州藩は中央政府への征討を経験し、討幕運動への流れに傾いていくことになります。

水戸藩においても、同様に尊王攘夷派と開国佐幕派の間で争闘が続き、盟約の理念が主流にならなかったものの、尊王攘夷派にはその後の行動指針として強く意識されることとなります。

まとめ

丙辰丸の盟約は、幕末期の重要な歴史的出来事であり、長州藩と水戸藩の間で結ばれた密約は、当時の政治的背景と社会情勢を反映したものです。幕藩体制の変革を目指したこの盟約は、その後の日本の歴史を形作る一因ともなりました。両藩の士族たちの奮闘は、戦国時代の伝統を引き継ぎつつも、近代国家形成への道筋を作ったと言えるでしょう。

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