丙辰丸

丙辰丸 – 幕末の洋式軍艦

丙辰丸（へいしんまる）は、幕末期に長州藩で建造された西洋式の帆船であり、長州藩初の洋式軍艦として知られています。この艦船が持つ歴史的重要性は、藩士たちの密約締結の舞台にもなり、普通の軍艦とは異なる特別な役割を果たしたことに起因しています。

建造の背景

1853年に黒船が来航した後、日本国内での大船建造の進展が期待されていました。この状況の中で、長州藩士である桂小五郎は、洋式軍艦の建造計画を藩に上申しました。彼は自身も、浦賀にて鳳凰丸を建造した中島三郎助を訪れ、洋式船の建造法を学ぶことに力を注ぎました。この提言に基づき、1856年2月に本格的に洋式軍艦の建造が始まることとなりました。

当初は幕府によって建設された伊豆国の戸田村の君沢形帆船を参考にすることが決定され、船大工の尾崎小右衛門が派遣されました。また、いくつかの船大工も招聘され、彼らは航海術についての学びも深めることとなりました。正式な建造命令は同年2月に藩主の毛利敬親から下されました。

5月には、萩の小畑浦の恵美須ヶ鼻に建造地を定め、船舶の建設が始まりました。1857年1月には進水が行われ、その名「丙辰丸」は干支に因んで名付けられました。この命名方法は以降の長州藩の洋式艦船でも踏襲されています。

船の仕様

丙辰丸は、全長25メートル、排水量47トンの木造船で、設計は幕府の君沢形に似ていることから、同様の特徴を持つ二檣スクーナー（スクーネル）です。2本のマストを持ち、それぞれには縦帆が装備されています。武装面では、絵図を見ると船首両舷に大砲1門ずつ搭載されていたことが確認できます。

建造される過程では、1857年9月に一時的な造船所の閉鎖がありましたが、その後周布政之助によって再開され、更なる大型の軍艦である庚申丸の建造も行われました。

運用と実績

完成した丙辰丸は、長州藩における最初の洋式軍艦として活躍を開始しました。1857年3月には藩主の観覧の下、試運転が行われ、以降は練習艦や輸送船として多輪な役割を担いました。1860年には松島剛蔵艦長の指揮の下、江戸への遠洋航海を実施し、その際には水戸藩士との間で幕末の急進的な政治改革に関する密約が取り交わされました。

この艦船は軍艦としては特に有力ではなかったものの、第二次長州征討や戊辰戦争においても実戦に参加し、1864年6月17日には、「丙寅丸」や「癸亥丸」と共に田ノ浦を襲撃しました。7月3日には、他の艦船とともに幕府艦隊に対する攻撃を行い、その名を歴史に刻むこととなります。

関連項目

丙辰丸の建造には、地元の大板山で製鉄された鉄が使用されており、これが艦船における船釘等に利用されたことも特筆すべき特徴です。丙辰丸は、幕末の動乱期において、藩の新たな戦略と技術の象徴的存在としてその名を轟かせました。

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