中ノ沢駅

中ノ沢駅

中ノ沢駅（なかのさわえき）は、北海道山越郡長万部町字中ノ沢に所在した、北海道旅客鉄道（JR北海道）函館本線の駅でした。電報略号はナワ、駅番号はH48が付与されていました。多くの地方駅と同様に、時代の流れと共に利用者が減少し、2024年3月16日のダイヤ改正をもってその歴史に幕を閉じ、廃駅となりました。

歴史

当駅は、1904年（明治37年）10月15日に北海道鉄道の紋別駅（もんべつえき）として産声を上げました。当初は旅客・貨物を取り扱う一般駅でした。1907年（明治40年）7月1日には北海道鉄道が国有化され、国の鉄道網に組み込まれます。その後、1909年（明治42年）10月12日の国有鉄道線路名称制定により、函館本線に属することとなりました。駅名が現在の「中ノ沢駅」に改称されたのは、開業から約10年後の1914年（大正3年）10月1日のことです。駅舎の改築が行われたのは1934年（昭和9年）9月で、その後、1949年（昭和24年）6月1日には日本国有鉄道の発足に伴い、その管轄に移ります。

戦後、鉄道施設の近代化が進められ、1960年（昭和35年）12月には単線自動信号化が実施されました。続く1960年代には函館本線の複線化が進められ、1965年（昭和40年）9月27日には当駅と長万部駅の間が、翌1966年（昭和41年）には国縫駅から当駅までの区間が相次いで複線化され、輸送力が増強されました。しかし、利用形態の変化に伴い、1972年（昭和47年）3月15日には貨物取扱いが、1984年（昭和59年）2月1日には荷物取扱いがそれぞれ廃止され、旅客専業駅となります。

合理化の流れの中で、1986年（昭和61年）11月1日には無人化が実施され、駅員配置はなくなりました。1987年（昭和62年）1月には、待合所として貨車（ヨ3500形車掌車）を改造した駅舎が設置されます。そして、同年4月1日の国鉄分割民営化により、北海道旅客鉄道（JR北海道）の駅として新たなスタートを切りました。2007年（平成19年）10月1日からは、他のJR北海道の駅と共に駅ナンバリングが導入され、H48の番号が割り当てられました。廃止直前まで、2016年まで運行されていた快速「アイリス」の停車駅でした。

廃止に向けた動きは2023年（令和5年）に表面化します。同年6月、翌春のダイヤ改正での当駅廃止の意向がJR北海道から長万部町へ伝えられたことが報じられました。町内では住民説明会が開催されましたが、高校生の通学に関する要望はあったものの、廃止そのものに対する強い反対の声は上がりませんでした。同年9月7日には、長万部町長が町議会で廃止受け入れの方針を報告し、最終的に2024年（令和6年）3月16日、利用者減少を理由に当駅は廃止されました。

駅名の由来

旧駅名の「紋別」は、この地を流れる川のアイヌ語名称「モペッ（mo-pet）」に由来します。この「モペッ」の解釈には諸説あり、1973年刊行の資料では「子なる川、すなわち支流」と紹介されていますが、研究者によっては同音異義の「静かな・川」を語源とする説も提唱されています。この名称は、現在も河川名として残っています。

現在の駅名「中ノ沢」への改称は、道内に同名の地名が多数存在したことが理由の一つとされています。この地が、ワルイ川（和類川とも表記）と紋別川という二つの川の中間に位置し、沢地を形成していることに由来する地理的な名称です。

駅構造

廃止時点の中ノ沢駅は、地上駅で単式ホーム2面2線の構造でした。かつては貨物取扱いを行っていた名残で、混合ホーム2面3線を有していましたが、後に中線が撤去されています。ホーム間は構内踏切によって連絡されていました。駅舎としては、貨車（ヨ3500形車掌車）を改造した待合所が設置されているのみで、長万部駅が管理する無人駅でした。

駅周辺

当駅周辺地域への本格的な入植は、明治時代に四国地方（香川県や徳島県）からの移住者によって始まりました。しかし、土地柄から農業は思うように振るわず、一方で内浦湾沿岸の漁業、特にホッキ貝漁が一時期栄えたこともあります。また、沿岸部の砂浜や段丘には砂鉄が多く含まれており、かつては中ノ沢駅前でも砂鉄の採取が行われていました。現在、駅周辺には中ノ沢市街が広がり、幹線道路である国道5号が通っています。主な施設としては、菓子店の青華堂やお菓子の直売所、旧長万部町立中ノ沢小学校跡地、中の沢振興会館などがあります。また、函館バスの「中ノ沢駅前」停留所があり、公共交通の便も存在します。

隣接する駅は、函館本線廃止時点において、国縫駅（H49）と長万部駅（H47）でした。

もう一度検索