中井哲之

中井 哲之

人物・経歴

中井哲之（なかい てつゆき）氏は、1962年7月6日に広島県廿日市市で生まれました。高校野球の指導者として知られ、現在は母校である広陵高等学校で硬式野球部の監督および社会科教諭を務めています。大阪商業大学を卒業しています。

選手時代

広陵高校の選手として、1980年には3年生で春夏連続して甲子園に出場しました。春の第52回選抜高等学校野球大会では1番遊撃手として、夏の第62回全国高等学校野球選手権大会では1番三塁手としてプレーしました。当時のチームは、個性的な投球フォームで注目された渡辺一博氏や、後に広島カープで活躍する原伸次氏らを擁し、優勝候補にも挙げられていましたが、春は準決勝で高知商業高校に、夏は準々決勝で天理高校にそれぞれ敗れ、惜しくも全国制覇は叶いませんでした。中井氏自身は、対戦相手に有力な投手が多かったため、打撃では目立った成績を残せませんでしたが、持ち前の俊足を生かし、監督の指示に依らず自らの判断で効果的な盗塁を成功させるなど、チームに貢献しました。

指導者として

大阪商業大学を卒業後、1985年に母校である広陵高校の商業科教諭となり、同時に野球部コーチに就任しました。コーチ時代には、後にプロ野球界で大成する金本知憲氏らを指導しています。1990年4月、当時低迷期にあった野球部の監督に27歳の若さで抜擢されました。就任後、伝統的に厳しかった上下関係の体質改善に取り組むなどチームの改革に着手し、わずか1年後の1991年春には、広陵高校を実に65年ぶりとなる選抜高等学校野球大会優勝へと導きました。決勝では、松商学園高校のエースであった上田佳範氏（元中日ドラゴンズほか）から得点を重ねて勝利を収めました。

その後も指導者として手腕を発揮し続け、2003年春には、西村健太朗氏（元読売ジャイアンツ）、白濱裕太氏（元広島東洋カープ）、上本博紀氏（元阪神タイガース）らを擁して再び選抜大会を制覇し、自身2度目の全国優勝を果たしました。

監督を過去に2度辞任した時期がありますが、いずれも早期に復帰し、2024年現在も広陵高校の指揮を執っています。選手からは兄のように慕われ、選手一人ひとりと深い信頼関係を築く指導スタイルで知られています。多くの卒業生をプロ野球界へ送り出しており、その育成能力には定評があります。また、選手にユニークなあだ名をつけることでも知られており、西村健太朗氏の愛称である「フランケン」も中井氏が命名したものです。現代の高校野球界を牽引する指導者の一人として、広陵の伝統である強力打線を軸に、走攻守のレベルが高いチームを毎年作り上げています。チームは先行逃げ切りを得意とする一方で、相手に先制されると立て直しが難しい場面があるという指摘もありますが、近年は選手自身が状況判断を行い、監督の指示なしにプレーを選択する「考える野球」を取り入れています。

2007年夏の全国高等学校野球選手権大会では、大会中に自身が体調不良で指揮を執れない状況に陥るアクシデントがありましたが、かえってチームは結束を強め、準決勝で選抜優勝校である常葉菊川高校を破り、決勝へ駒を進めました。広陵高校にとって長年の目標である夏の全国制覇に挑みましたが、佐賀北高校との決勝戦で、エースの野村祐輔氏（現広島カープ）が、同点に追いつかれた直後に逆転満塁ホームランを浴び、惜しくも優勝を逃しました。この試合後、一部の審判の判定に対する発言が問題視され、日本高等学校野球連盟から厳重注意処分を受けましたが、当時の判定に疑問を感じていたファンからは、一定の理解を示す声も上がりました。

2021年4月には、新たに創設された広陵高校女子硬式野球部の総監督も兼任することが発表されました。

甲子園での足跡

監督として、春の選抜大会には14回出場し、24勝12敗1引き分け、勝率.667を記録。優勝2回の実績があります。夏の全国選手権大会には9回出場し、15勝9敗、勝率.625を記録。準優勝2回の実績があります。春夏通算では、23回出場で39勝21敗1引き分け、勝率.650。優勝2回、準優勝2回という輝かしい成績を残しています。

主な教え子（一部）

中井氏の指導のもと、多数のプロ野球選手が育っています。主な教え子としては以下のような選手が挙げられます。（順不同）

二岡智宏
金本知憲
福原忍
新井良太
西村健太朗
白濱裕太
上本博紀
野村祐輔
小林誠司
有原航平
佐野恵太
中村奨成
* 宗山塁

など、多岐にわたります。

もう一度検索