中冨三郎

中冨三郎：久光製薬の創業者

中冨三郎（なかとみ さぶろう、1876年2月〜1957年3月17日）は、日本の実業家として知られ、久光製薬の前身である久光合名会社の創設者であり社長として活躍しました。彼の業績は、日本の製薬業界の発展に多大な貢献をしました。

経歴

中冨は、現佐賀県鳥栖市の基肄郡田代村で、久光与市の三男として誕生しました。若い頃から実業に興味を持ち、1903年には兄弟と共に久光兄弟合名会社を設立し、代表社員に就任しました。この会社は、後の久光製薬へと成長する道を歩み始めます。

1905年には、旧筑後国久留米藩士族の養子となり、中冨姓を名乗ります。この後、製薬業において注目すべき研究を開始します。彼は、和紙に薬剤を塗布する方法を探求し、1907年には「朝日万年膏」を改良。また、健胃下剤「快復丸」、消炎鎮痛薬「アスピリン丸」、感冒薬「赤龍丸」といった新たな製品を開発しました。これにより、彼の製品は朝鮮、中国、台湾などの海外市場へも展開されます。

中冨は、従来の家内工業的な製薬業態を改革し、近代化を進めました。1919年には製薬の電動化を進め、機械生産の体制を整え、効率的な出荷システムを確立しました。これにより、彼のビジネスは飛躍的に成長します。

特に注目すべきは、1934年に開発した「サロンパス」です。従来の黒褐色の膏薬に代わり、白い消炎貼付薬を市場に送り出したことが、商品の需要を大きく広げました。この「サロンパス」は、その後久光製薬の看板商品となり、業界内外での存在感を高めました。サロンパスの成功を授けた後、中冨は長男中冨正義へと社長職を譲ります。

人間性と思想

中冨は「良いことを行なうことは、人に知られない方が良い」という信条を持ち、他者に対して見返りを求めない姿勢で生きました。彼は人知れず善行を重ね、「形のない貯蓄」を心掛けることで、お客様を最優先に考える精神を体現していました。この隠れた徳を重んじる姿勢は、彼の長い実業家人生を通じて、強く根付いていました。

記念

彼の功績を称えて、平成31年3月28日には中冨記念くすり博物館に銅像が建立され、彼の貢献が今もなお多くの人々によって記憶されています。中冨三郎は、日本の製薬業界において、革新と発展をもたらした人物として歴史にその名を刻んでいます。

もう一度検索