中国稲荷山鋼索鉄道

中国稲荷山鋼索鉄道：最上稲荷の天空を結んだ短い歴史

岡山県岡山市、最上稲荷の境内にある龍王山を駆け上がっていた中国稲荷山鋼索鉄道。1929年から1944年という短い期間ながらも、中国地方で唯一のケーブルカーとして人々を魅了しました。全長わずか0.4km、標高差167mの路線は、山下駅と奥の院駅を結び、所要時間4分、20分間隔で運行されていました。

誕生から廃止まで

このケーブルカーは、現在のJR西日本津山線・吉備線を運営していた中国鉄道の子会社によって建設されました。日本輸送機製作所製の車両は、木造で長さ約9.1m、幅約2.6m、高さ約3.9m、定員50名。ギーセライベルン式という制動方式を採用していました。

開業から15年後、太平洋戦争の激化により、不要不急線として指定。1944年6月1日、鉄材供出のため、短い歴史に幕を閉じました。

戦後、1961年には稲荷山観光ケーブルが設立され、復活計画も持ち上がりましたが、鉄道敷設免許の失効により実現には至りませんでした。

廃線跡の現状と歴史的遺産

現在、山下駅跡は新本殿建設に伴い旧本殿（霊応殿）に移設され、面影はありません。しかし、奥の院への参道には、当時の排水溝や路盤のコンクリート、ボルトなどの遺構がわずかに残っています。奥の院駅跡地には、ホームの一部や巻上機の台座などが藪の中に隠れるように残存しているとの事です。また、奥の院駅前の広場には、当時のラジオ塔が今も残されています。最上稲荷には、当時のケーブルカーの写真や資料が保管されているとのことです。

詳細データ

路線距離: 0.4km
軌間: 1067mm
駅数: 2駅（山下駅、奥の院駅）
高低差: 167m
車両: 日本輸送機製作所製、木造、長さ約9.1m、幅約2.6m、高さ約3.9m、定員50名、車号A、B
製造元: 日本輸送機製作所
制動方式: ギーセライベルン式
開業日: 1929年（昭和4年）2月9日
廃止日: 1944年（昭和19年）6月1日
接続路線: 山下駅：中国鉄道稲荷山線（稲荷山駅）

結論

中国稲荷山鋼索鉄道は、短いながらも最上稲荷の歴史に深く刻まれた存在です。その痕跡は、現在も最上稲荷の境内に見ることができ、当時の賑わいを感じさせる貴重な史跡となっています。わずかに残る遺構と、最上稲荷に保管されている資料は、この忘れられたケーブルカーの歴史を語り継いでいく上で重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

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