中国航天科技集団

中国航天科技集団有限公司（China Aerospace Science and Technology Corporation, CASC）は、中華人民共和国の宇宙開発計画において中心的な役割を担う、国家が所有する主要企業です。その活動は、中国の科学技術力と国防力の向上に不可欠な要素となっています。

設立と沿革

CASCは、中国が経済的な改革開放を進める中で、1999年7月に現在の形で公式に発足しました。この組織のルーツはさらに遡り、1956年以来、様々な宇宙関連のプロジェクトを推進してきた中国航天公司（China Aerospace Corporation, CAC）の一部門として機能していました。長年にわたる研究開発と技術蓄積が、今日のCASCの基盤を築いています。

多岐にわたる事業領域

CASCの事業は、その名の通り宇宙技術を中心としながらも、非常に広範にわたっています。主な活動分野は以下の通りです。

宇宙・防衛分野

中国の宇宙開発における主導的な役割を担う企業として、宇宙船や人工衛星、各種発射ロケットシステムといった宇宙航行体の設計、開発、製造を一貫して手がけています。また、国家の安全保障に直結する戦略・戦術ミサイルシステムや、これらを運用するための地上支援機器の開発・生産も重要な事業の一つです。

民需産業

宇宙・防衛分野で培われた高度な技術と生産能力は、民生用途にも広く応用されています。機械、化学工業、電気通信機器、様々な種類の輸送機器、コンピューターおよび関連システム、医療機器、環境保護関連機器など、幅広い分野で高品質な製品を生み出し、社会の発展に貢献しています。

国際市場での活動

国際市場においては、商業用衛星の打ち上げサービスを提供しており、世界の宇宙産業における重要なプレイヤーの一角を占めています。

先進技術の開発

CASCは、特定の技術分野において世界的に見ても先進的なレベルにあります。特に、高エネルギー推進剤の技術、ロケット打ち上げ時に推力を補助するブースター（補助ロケット）の効率的な設置技術、そして一度の打ち上げで複数の衛星を異なる軌道に投入する多衛星同時打ち上げ技術の開発および実用化において、その高い技術力が知られています。

巨大な組織体制

CASCは、その巨大かつ複雑な事業を遂行するため、傘下に多数の研究所、専門企業、および直属機関を擁する巨大な企業グループとして組織されています。これらの下部組織は、それぞれの専門分野において研究開発、生産、サービス提供などを担い、CASC全体の目標達成に貢献しています。

以下に、その主要な構成組織の一部を示します。

傘下の研究所
中国運載火箭技術研究院 (CALT)
航天動力技術研究院 (AASPT) - 主に固体ロケットモーターの研究開発・生産を担当
中国空間技術研究院 (CAST)
航天推進技術研究院 (AALPT) - 主に液体ロケットエンジンの研究開発・生産を担当
四川航天技術研究院 (SAAT)
上海航天技術研究院 (SAST)
中国航天電子技術研究院 (CAAET)
中国航天空気動力技術研究院 (CAAA)

傘下の専門企業
中国衛星通信集団公司 (CSCC)
中国長城工業総公司 (CGWIC)
中国航天工程諮詢中心
中国資源衛星応用中心
航天科技財務有限責任公司
航天科技投資控股有限公司
航天時代電子技術股分有限公司
中国航天国際控股有限公司
北京神舟航天軟件技術有限公司
深圳航天科技創新研究院
航天長征国際貿易有限公司
中国長峰機電技術研究設計院

直属機関
中国航天標準化研究所
中国宇航出版社
航天アーカイブス
航天通信中心
中国航天ニュース社
中国宇航学会
航天人才開発交流中心
* 航天印刷所

CASCは、経済的な規模においても巨大であり、約110億USドル相当の資本を有し、約11万人もの従業員を擁しています。

国際的な位置づけ

宇宙および防衛分野でのその役割から、CASCの活動は国際的な注目を集めています。例えば、アメリカ合衆国商務省産業安全保障局による輸出規制リストであるエンティティ・リストに掲載されている企業の一つです。

まとめ

中国航天科技集団有限公司（CASC）は、中国の宇宙開発、防衛技術、そして広範な民需産業を支える中核的な国有企業です。その長い歴史、広範な事業領域、世界をリードする技術力、そして巨大な組織体制は、中国が科学技術大国としての地位を確立し、国際社会における影響力を高める上で重要な役割を果たしています。

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