中外写真薬品

中外写真薬品株式会社は、1948年に久郷政吉氏らによって設立された、写真現像薬品の製造を主とする企業です。創業当初は、東京日本橋で仕入れた試薬を写真現像用に調合し販売していました。その後、墨田区に工場を設け、全国に営業所と研究所を開設するなど、事業規模を拡大しました。

最盛期には、全国15ヶ所に事業拠点を構え、写真製版用薬品や印刷版（PS版）の販売、ノーリツ鋼機のミニラボ販売台数で首位を獲得、イルフォード製品の日本総代理店を務め、2001年には年商100億円を超えるまでになりました。しかし、デジタルカメラの普及により写真現像の需要が減少し、さらに売上を支えていたイルフォード製品のフィルムや印画紙の販売契約が解除されたことが大きな転換期となりました。現在では年商20億円台にとどまっています。

近年は、ネットプリント事業に注力し、子会社化や既存企業の買収を進めています。しかし、ネットプリントの品質面での課題や、従来から薬品を販売していたDPEショップへの影響も指摘されています。

2002年には、サインディスプレイ部門をジェットグラフ株式会社として分離独立させました。ジェットグラフは、東京に本社を置き、大阪、名古屋、福岡に営業所を展開。インクジェットプリンターやメディア、ラミネートフィルム、ディスプレイ用品などを扱っています。2017年には、中外写真薬品の営業部門がジェットグラフに移管され、中外写真薬品は製造に専念しています。

中外写真薬品の歴史を年表で振り返ると以下のようになります。

1948年10月1日：創業。
1962年：購買部門を中外薬品工業株式会社として分離。
1975年：イルフォスピードペーパーの国内総発売を開始。
1987年：イルフォード社と日本総代理店契約を締結。
2000年：ドイツ・ベグラ社製品の直輸入を開始。
2002年7月：サインディスプレイ販売部門をジェットグラフ株式会社として分離。
2008年4月：イルフォード日本総代理店契約が解除。フィルム印画紙の販売権はサイバーグラフィックスへ移管。
2017年7月：営業部門をジェットグラフ株式会社に移管・再統合。

関連会社としては、購買部門を分割子会社化した中外薬品工業株式会社や、サインディスプレイ部門から独立したジェットグラフ株式会社があります。また、ネットプリント事業を展開するマイアルバム株式会社や、かつて傘下であったイメージングゲート株式会社も関連があります。これらの関連会社は、仕入れや販売において相互に関係を持っています。

中外写真薬品は、写真業界の変遷と共に事業形態を変化させてきました。デジタル化の波に乗りながら、新たな事業展開を模索している状況です。

なお、中外写真薬品は「中外グループ」と表現されることがあるため、ロシュグループの中外製薬と混同されることがありますが、資本・人的関係は一切ありません。

もう一度検索