中央政府駐香港連絡弁公室

中央政府駐香港連絡弁公室（香港中聯辦）とは

中央政府駐香港連絡弁公室（以下、香港中聯辦）は、香港特別行政区における中華人民共和国中央政府の出先機関です。香港特区政府との事務連絡、香港情勢の調査、中国本土との交流促進など、多岐にわたる業務を担っています。この機関は、かつて存在した新華社香港支社を前身とし、香港における中国の影響力を示す重要な存在です。

設立の背景と経緯

1999年12月、中国国務院の決定により、2000年1月に新華社香港支社から分離・独立する形で香港中聯辦が設立されました。新華社香港支社は長らく、中国の事実上の代表部としての役割を担っていましたが、香港返還後の新たな体制下で、より専門的な機関が必要とされたためです。

香港中聯辦の設立当初は、香港特区政府と中央政府が直接連絡を取れるようになったため、その存在意義は小さくなるという見方も一部にありました。しかし、香港と中国本土の経済・社会関係が緊密化するにつれて、その業務は増加の一途をたどっています。

主な役割と活動

香港中聯辦の主な役割は以下の通りです。

香港特区政府との事務連絡: 中央政府と香港特区政府間の円滑なコミュニケーションを促進します。
香港情勢の調査: 香港の政治、経済、社会情勢を調査し、中央政府に報告します。
香港の財界・政治勢力との接触: 香港の各界との関係を構築し、情報収集を行います。
中国本土との交流促進: 香港と中国本土間の経済、文化、教育交流を支援します。
全国人民代表大会（全人代）香港代表選挙への関与: 過去には、全人代香港代表選挙に介入したと指摘されることもあります。

香港中聯辦は、国務院香港マカオ事務辦公室の指導を受けていると見られています。

歴代主任

香港中聯辦のトップは主任であり、歴代主任は以下の通りです。

姜恩柱（2000年1月 - 2002年8月）：新華社香港支社長から横滑り。
高祀仁（2002年8月 - 2009年5月）：元中共広東省委員会副書記。
彭清華（2009年5月 - 2012年12月）：後任中共広西チワン族自治区委員会書記。
張曉明（2012年12月 - 2017年9月）：後任国務院香港マカオ事務弁公室主任。
王志民（2017年9月 - 2020年1月）
駱恵寧（2020年1月 - 2023年1月）：元中共青海省委員会書記。
鄭雁雄（2023年1月 - ）：中央人民政府駐香港特別行政区国家安全維持公署署長から横滑り。

組織構造

香港中聯辦は、主任の下に副主任、秘書長、副秘書長などが配置され、その下に複数の部が設けられています。幹部は、中央政府の官庁や広東省の地方政府の高級官僚が務めています。具体的な内部組織は以下の通りです（全てではない）。

辦公庁
人事部
宣伝文体部
協調部
研究部
社団連絡部
社会工作部
経済部
教育科技部
台湾事務部
青年工作部
法律部
監察室
機関工作部
信息諮詢室
保安部
警務連絡部
行政財務部
港島工作部
九龍工作部
新界工作部
北京オフィス
広東連絡部
深圳培訓調研中心

中国本土での業務

香港中聯辦は、中国本土での実務処理のため、広東連絡部、深圳辦事処、北京辦事処の3つの拠点を設けています。これらの拠点は、香港への公務員の派遣や、香港への留学生の募集・選抜などを担当しています。香港中聯辦は、実質的に国務院香港マカオ事務辦公室の実施機関としての役割も担っています。

新華社香港支社について

新華社香港支社は、香港中聯辦の前身であり、1947年5月に設立されました。当初から、中国当局の代表部としての機能と、通信社としての機能の両方を兼ね備えていました。代表部としての機能は「大新華」と呼ばれ、香港の中国資本企業の監督や左派勢力との連絡などを担っていました。

歴代支社長

新華社香港支社の歴代責任者は以下の通りです。

喬冠華（1947年5月 - 1949年）：後に外交部長。
黄作梅（1949年 - 1955年）：カシミールプリンセス号爆破事件で死去。
李沖（1955年 - 1957年）：総編輯として社長の職責を代行。
祁烽（1957年 - 1959年）：副社長として社長の職責を代行。
梁威林（1959年10月 - 1978年7月12日）
王匡（1978年7月12日 - 1983年5月19日）、李菊生（1978年 - 1984年）：共同で社長を歴任。
許家屯（1983年 - 1989年）：元中共江蘇省委員会第一書記。
周南（1990年1月 - 1997年7月）：元外交部副部長。
* 姜恩柱（1997年7月 - 2000年1月）：2000年以降中連辦主任に横滑り。

返還後の変化

香港返還後も、新華社香港支社はしばらくの間、従来の組織体制を維持していましたが、1999年12月に国務院が組織改編を決定し、2000年1月に現在の香港中聯辦となりました。

通信社としての機能

新華社香港支社の通信社としての機能は、出先機関としての機能とは別に存在し、「小新華」と呼ばれていました。現在も、新華社アジア太平洋地区総本部として、香港で活動を続けています。

まとめ

中央政府駐香港連絡弁公室は、香港における中国中央政府の重要な出先機関であり、香港の政治、経済、社会に大きな影響を与えています。その前身である新華社香港支社の歴史を理解することも、香港情勢を把握する上で欠かせません。

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