中奥小姓

中奥小姓について

中奥小姓（なかおくこしょう）は、江戸時代の幕府に存在した特定の役職の一つです。この役職は、主に儀礼に関連する業務を担当し、将軍の外出に供奉することが主な任務でした。江戸幕府の中での地位は高いものの、実際の業務は少なく、しばしば現在的な意味での「閑職」とみなされていました。

歴史的背景

この役職の起源は、寛永9年（1632年）にさかのぼります。この年、江戸幕府の大御所であった徳川秀忠に付き従っていた小姓たちの中から、譜代大名の庶子である土屋之直や滝川利貞を含む6人が初めて任命されました。これを皮切りに、中奥小姓は年々増員され、延宝2年（1674年）には27人に達しました。幕末には、約40人がこの職に就いており、任務は6つの班に分かれて交代で行われていました。

職掌と役割

中奥小姓の主な役割は、将軍の外出時に供奉し、江戸城御殿において儀礼の際に様々な仕事を行うことでした。具体的には、儀式の際に簾を持ち上げたり、灯りを点じたり、役人に与えられる品々を配置したり、年始の宴席で給仕を行ったりすることが含まれます。儀礼の日には全員が出勤し、職務にあたりましたが、平日には詰所で待機するだけの時間も多いのです。

特に役人が江戸城内を巡回している間に、山吹の間（黒書院の隣にある部屋）で挨拶を受けることが主な業務であり、実際にはあまり多くの仕事を持っていなかったため、ときには「弁当を食べて帰宅するだけ」という印象を持たれることもありました。

格式と人事

中奥小姓は、その名称からも想像できるように、職務には高い格式が求められました。特に、両番（書院番・小姓組）や中奥番を勤めた上級の旗本の中でも高禄を受けている者が多く任命されるため、3000石以上の無役の寄合から直接指名を受けることもありました。将来的には、御側小姓、五番方の番頭、持頭など、さらなる地位への出世も見込める職でした。

中奥小姓は、表面上の格式は高いものの、実際の業務量や責任は軽いことから、いわば重要視されていると同時に、実態は限られた職務をこなす役割に留まっていたともいえるでしょう。江戸幕府の中での重要な儀礼的役割を担う一方で、日常的には穏やかな生活を送る者たちであったことが、後世に語り継がれています。

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