中山世鑑

『中山世鑑』（ちゅうざんせいかん）は、1650年に琉球王国で編纂された最初の正史です。全6巻からなり、編纂者は羽地朝秀です。王命により編纂されたこの書物は、琉球王国の歴史を公式に記録した重要な文献とされています。

構成としては、巻頭部分が漢文で記述されており、続く正巻部分は全5巻で構成され、漢字仮名交じり文（和文）で書かれています。和暦が採用されている点も特徴です。

『中山世鑑』で特筆すべき点の一つに、源為朝（鎮西八郎）が琉球に逃れ、その子が琉球王家の始祖である舜天になったという記述があります。この説は、以前に成立した『琉球神道記』、『保元物語』、『平治物語』などにも見られるもので、当時の歴史認識を反映しています。この為朝渡来説は、後世の文学作品にも影響を与え、江戸時代後期には曲亭馬琴と葛飾北斎による読本『椿説弓張月』が生まれました。また、大正時代には、この記述に基づき為朝上陸の碑が建立され、碑には「上陸の碑」の文字と、建立に尽力した東郷平八郎の名前が刻まれています。

さらに、鎌倉幕府が建てた京都・建仁寺の文献にも、「源為朝が琉球に渡り建国の主となる」という内容の記述が見られることから、為朝渡来説は当時の社会に広く受け入れられていたと考えられます。

『中山世鑑』は、琉球王国の歴史を研究する上で欠かせない基本史料であり、その記述は文学、史跡など多方面に影響を与えています。刊行文献としては、首里王府編著の『中山世鑑　訳注』や、諸見友重訳注による榕樹書林「琉球弧叢書」などがあります。

関連する項目としては、琉球国王、中山世譜、球陽、アマミキヨ（阿摩美久）、琉球文学などが挙げられます。

外部リンクとしては、琉球大学附属図書館伊波普猷文庫所蔵の写本（田島利三郎写）や、国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている『琉球国中山世鑑』などが参考になります。

『中山世鑑』は、琉球王国の歴史だけでなく、日本の歴史や文化との関わりを考える上でも重要な資料と言えるでしょう。

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