中山博道

中山博道の生涯と功績

中山博道（なかやま はくどう）は、1872年に石川県金沢市で生まれ、1958年にその生涯を閉じた日本の武道家である。彼は神伝重信流、神道無念流剣術、神道夢想流杖術など、数多くの流派の達人として知られ、剣道、居合術、杖術の各分野で範士の称号を持つ。特に大日本武徳会からは、剣道、居合術、杖術の三道で初めて範士号を授与された人物でもある。

生い立ちと武道の道

博道は、旧加賀藩士の家に生まれたが、明治維新の混乱で家が没落し、幼少期に富山県に移り住む。その後、8歳で商家に働きながら剣術や柔術を学び、18歳で有信館道場に入門する。貧弱な体格にもかかわらず、厳しい修行を経て、ついに免許皆伝を取得した。彼は根岸信五郎の養子となり、神道無念流を継承し、本郷に道場を構える。

武道界の権威

1912年、博道は全国で25名の剣道形制定委員に選出され、剣道の発展に寄与した。昭和初期には、剣道界における権威者としての地位を確立し、高野佐三郎と並ぶ存在となった。彼は多くの 公演や試合に出場し、模範演武を行うなど武道の普及に尽力した。戦後は一時期戦犯容疑で収監されるが、無罪となり、その後の人生を武道団体の名誉職に従事して過ごした。

居合と剣道の思想

博道の居合術への情熱は、後援者である渋沢栄一の影響も受けていたとされる。彼の居合術に関する考え方は、対者を予想せずに自然な動きを重視しており、居合は単なる自己満足のためのものではないとし、修行者が陥りやすい安易さを戒めた。特に試し斬りも居合完成の一環として取り組んでおり、単なる曲芸的な斬り方は批判している。

剣道と杖術の融合

神道夢想流杖術を学ぶことにより、剣道の技術をより深く理解した博道は、杖術の指導にも多大な影響を与えた。彼は少年時代から柔術の修行を重ね、武道の基礎を築いていった。博道は形稽古と竹刀の使用を一体として捉えており、現代剣道におけるその考えは先見の明を示している。

複合的な武道家としての活動

博道はまた、弓術、西洋剣術、銃剣術、槍術など、異なる武道にも取り組み、その技を取り入れてきた。彼は明治時代から近代武道の発展に寄与し、日本の武道文化を広める一翼を担った。博道は、80歳まで若者に負けることがないという信念を持ち続け、稽古の重要性を常に強調していた。

晩年と評価

博道は、戦後の混乱により道場を失ったものの、武道団体の名誉職に名を留め、入退院を繰り返しながらも武道界に尽くした。1958年に享年86で亡くなり、葬儀には多くの名士が参列した。彼の教えや実績は、現在でも武道家や剣道愛好者に影響を与え続けている。博道は「昭和の剣聖」と称され、剣道の発展に貢献した重要な人物であった。

もう一度検索