中山巳代蔵

中山巳代蔵

中山巳代蔵（なかやま みよぞう、1867年10月27日（慶応3年10月1日） - 1921年（大正10年））は、日本の内務官僚、実業家であり、官選の栃木県知事を務めました。

生い立ちと学歴

中山巳代蔵は、備前国邑久郡、現在の岡山県瀬戸内市豊原に生まれました。父は中山壮左衛門。彼は長男として生を受け、幼少期から学問に励みました。第一高等学校を経て、1894年に帝国大学法科大学（現在の東京大学法学部）を卒業。当時のエリート官僚への道を歩むための確かな学力を身につけました。

内務官僚としてのキャリア

1895年、中山巳代蔵は内務省に入省し、土木局に配属されました。1906年12月には、文官高等試験行政科試験に合格。これにより、彼は官僚としての地位を確立し、そのキャリアを本格的にスタートさせました。その後、長崎県参事官、土木監督署事務官兼内務事務官、内務書記官、京都府事務官などを歴任し、地方行政の実務経験を豊富に積みました。

栃木県知事時代

1906年12月、中山巳代蔵は栃木県知事に就任しました。栃木県知事としての在任中、彼は谷中村の在留民に対する強制的な立ち退きと、渡良瀬川の改修という二つの重要な政策を推進しました。これらの政策は、当時の社会情勢と深く関わっており、賛否両論を呼びました。

谷中村の強制立ち退き

谷中村は、足尾銅山の鉱毒問題により深刻な被害を受けていました。渡良瀬川の氾濫により、農地は汚染され、住民の生活は困窮を極めていました。政府は、渡良瀬川の改修と洪水を防ぐ遊水池を建設するために、谷中村の住民に立ち退きを迫りました。中山巳代蔵は、この強制立ち退きを推進する役割を担いました。この政策は、住民の生活を無視した強引なものであったとして、大きな批判を浴びました。

渡良瀬川の改修

渡良瀬川の改修は、足尾銅山の鉱毒問題を解決し、周辺地域の洪水を防ぐための重要な事業でした。中山巳代蔵は、この改修事業を積極的に推進しました。遊水池の建設や河川の整備により、洪水のリスクは軽減されましたが、谷中村の住民は故郷を失うこととなりました。

1911年8月、中山巳代蔵は栃木県知事を休職となりました。

実業家としての活動

栃木県知事を休職した後、中山巳代蔵は実業家として活動しました。神奈川県農工銀行 (株) の取締役を務め、地域経済の発展に貢献しました。

死没

中山巳代蔵は、1921年に生涯を閉じました。彼の業績は、栃木県の発展に貢献した一方で、谷中村の住民にとっては苦難の歴史として記憶されています。彼の政策は、現代においても評価が分かれるところであり、歴史的な視点からの検証が続けられています。

参考文献

歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年。
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
『栃木県歴史人物事典』下野新聞社、1995年。
角川日本地名大辞典 33 岡山県。
* 『人事興信録』3版、人事興信所、1911年。

もう一度検索