中山蛙

中山 蛙（なかやま かえる）

中山 蛙（1950年1月1日 - 2023年12月7日）は、日本の漫画家、イラストレーター、そして晩年にはシニアモデルとしても活動した、多岐にわたる顔を持つ人物です。岡山県倉敷市に生まれ、東京都練馬区を主な活動拠点としました。家族には、少女漫画家として知られる実妹の中山星香や、元漫画家である妻の宇海（白沢）冬香がおり、漫画との深い縁がありました。

経歴

1969年、東京都立工業短期大学機械設計科を中途退学した中山氏は、翌1970年に猪まんがスタジオに入所しました。同年、漫画雑誌『COM』の新人競作企画において「一人と一匹」を発表し、プロの漫画家としてデビューを果たします。1972年に猪まんがスタジオを離れてからはフリーランスとして活動し、漫画執筆に加えてイラストレーションの分野にもその才能を発揮しました。また、クリエイターとしての枠を超え、1992年の第16回参議院議員通常選挙にはモーター新党公認で比例区から立候補するなど、社会活動にも関心を示しましたが、議席を得るには至りませんでした。

多彩な趣味と人物像

中山氏は非常に幅広い趣味を持っていました。カメラ、オートバイ、釣り、キャンプといった活動的な趣味を深く愛好し、これらの分野に対する豊富な知識と経験は、後の著作活動にも大きく影響を与えました。特にカメラへの造詣は深く、関連する多数の専門書を執筆しています。晩年に入ってからは、心身の鍛錬として弓道を始め、熱心な稽古の末に二段を取得しました。さらに、体力維持のために週に一度はプールに通うなど、健康的な生活を心がけていました。これらの趣味は、彼の好奇心の強さと、様々なことに挑戦し続ける姿勢を示しています。

教育活動

自身の持つ知識や技術を次世代に伝えることにも熱意を燃やしました。2005年からは、日本工学院専門学校のクリエイターズカレッジ（マンガ・アニメーション科）にて非常勤講師を務め、将来漫画家やアニメーターを目指す学生たちの指導にあたりました。教育の現場でも、長年の経験に基づいた実践的な視点から、多くの若者に影響を与えたことでしょう。

シニアモデルとしての活躍

漫画家、イラストレーターとしてのキャリアを確立した後、中山氏は意外な分野でも新たな才能を開花させました。フリーランスになったばかりの1972年には、著名な演出家である蜷川幸雄氏の舞台にエキストラとして参加した経験があり、これが後年の活動の伏線となったのかもしれません。2011年、専門学校の同僚が所属していたモデル・エキストラ派遣事務所からの紹介をきっかけに、本格的にモデルとしての活動を開始しました。テレビドラマ「昼のセント酒」や様々な通販番組に出演。特に広告分野での活躍は目覚ましく、はなさく生命や地下鉄博物館など、数多くの企業や団体の広告媒体に登場し、その親しみやすい笑顔が印象を残しました。その後、別のモデル事務所に移籍してからは、シニアモデルとしてさらに活動の場を広げました。特に、デジタル素材のオンラインマーケットプレイスである「PIXTA」では、彼の写真素材が多数提供され、ビジネスシーンからライフスタイルまで、幅広いテーマで活用されました。これにより、漫画家・イラストレーターとしてだけでなく、モデルとしても多くの人々の目に触れる機会が増えました。

著作リスト

中山氏は漫画作品にとどまらず、多様な分野の著作を残しました。主な漫画作品には、SF的なものから日常を描いたものまで、「危険な賭け」「貰った災厄」「熊ん蜂の飛行」「暗号名はPART」「不屈の蛙」「無敵の蛙」などがあります。また、「蛙の図鑑シリーズ」「蛙の雑物日記」「蛙の漫画教室」「来た・見た・食った」といった、自身の経験や視点を反映したユニークなシリーズも手掛けました。

単行本としては、自身の趣味や専門知識に基づいたものが特に目立ちます。オートバイと旅をテーマにした「蛙とBIKEとヨーロッパ」、実用的な「まんがパーソナル無線入門」、そして釣りの専門書として「川づり全図鑑」「海づり全図鑑」「ルアーづり全図鑑」を刊行。さらに、カメラに関する著作は特に多く、「軍用カメラ大図鑑」（1、2）、「OLD TACKLE」、「ABUリール大図鑑」、「愛しのハッセルブラッド」、「ライカのしくみ・M3」、「ライカのしくみ2・IIIf&IIIg」、「ライカ症候群」、「分解図鑑・カメラのしくみ」といった専門性の高い書籍を多数執筆し、この分野における知識の深さを証明しました。

晩年

精力的に活動を続けていた中山蛙氏でしたが、2023年12月7日、73歳で逝去しました。訃報は、長年の友人や知人、例えばニコンのカメラレンズ研究家である秋山満夫氏や小説家の高千穂遙氏らが、ソーシャルメディア（現在のX）を通じて訃報を伝えたことにより広く知られることとなりました。

漫画家、イラストレーターとして確固たるキャリアを築きながらも、多趣味で飽くなき探求心を持ち続け、教育者としても後進を導き、そして晩年にはシニアモデルとして新たな可能性を切り開いた中山蛙氏。その生涯は、特定の枠にとらわれることなく、常に変化と挑戦を楽しんだ、文字通り「不屈の蛙」の名にふさわしいものでした。

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