ハッセルブラッド

ハッセルブラッド：写真史を彩るスウェーデンの名門カメラメーカー

ハッセルブラッドは、スウェーデンを代表するカメラメーカーであり、特に中判カメラの分野で世界的な名声を確立しています。その歴史は、1841年に貿易会社として創業したF. W. Hasselblad & Co.に遡ります。創業者の息子、アービット・ヴィクトル・ハッセルブラッドが写真愛好家であったことから、写真部門が設立されました。

コダックとの深い繋がり

アービットは新婚旅行で訪れたイギリスで、コダックの創始者ジョージ・イーストマンと親交を深め、1888年にはコダック製品のスウェーデン総代理店となりました。写真部門は事業拡大を続け、1908年にはHasselblad's Fotografiska ABとして独立。この頃から、ハッセルブラッドは写真業界で重要な役割を担うようになります。

写真家フリッツ・ヴィクトル・ハッセルブラッドの登場

アービットの孫であるフリッツ・ヴィクトル・ハッセルブラッドは、幼少期から写真に親しみ、18歳でドイツに渡り、カメラ製造を学びました。彼はドイツ、フランス、アメリカのカメラ工場やフィルム工場で働き、写真産業に関する専門知識を習得。帰国後、父との意見の相違から1937年に自身の会社Victor Fotoを設立しました。

第二次世界大戦と航空カメラ開発

第二次世界大戦中、ドイツからの軍用カメラの輸入が途絶えたスウェーデン軍は、墜落したドイツ軍機から発見した航空カメラの製造をフリッツに依頼。彼は「同じものは作れないが、それ以上のものを作れる」と応じ、1941年に航空用HK7型7×9cm判レンズシャッターカメラを開発しました。この経験が、後のハッセルブラッドのカメラ開発に大きな影響を与えました。

1600F型の登場と世界的な成功

1948年、ハッセルブラッドはアメリカ市場で1600F型カメラを発売。コダックの交換レンズをラインナップに加え、6x6cm判というフォーマットながら、レンズ交換式の一眼レフカメラという利便性から、世界中のプロカメラマンに支持され、高級中判カメラの代名詞となりました。

アポロ計画での活躍

ハッセルブラッドのカメラは、宇宙開発の歴史にもその名を刻んでいます。1968年の地球の出や1972年のザ・ブルー・マーブルなど、アポロ計画で撮影された数々の有名な写真は、全てハッセルブラッドのカメラによるものです。その卓越した性能と信頼性は、極限状態での撮影を可能にしました。

現在のハッセルブラッド

2012年にはハッセルブラッド・ジャパンが設立され、翌年には東京の原宿に世界初のハッセルブラッドストアがオープンしました。ここでは、最新のX1DシリーズやH6Dなどの製品を体験できます。2017年には、中国のドローンメーカーDJIに買収されましたが、ハッセルブラッドの伝統と革新性は今も受け継がれています。

関連企業・技術

ハッセルブラッドは、長年にわたり様々な企業と協力関係を築いてきました。以下はその主なものです。

イーストマン・コダック: コダックとの長年の関係は、ハッセルブラッドの初期の成功に大きく貢献しました。
カール・ツァイス: 多くのハッセルブラッドレンズがカール・ツァイスによって製造されています。
ローデンストック: アークボディ用レンズを製造しています。
シュナイダー・クロイツナッハ: Vシステムのバリオゴンズームレンズを製造しています。
富士フイルム: フジTX-1/ハッセルブラッドXPan, Hシステムを共同開発しています。

ハッセルブラッドの関連アワードと財団

ハッセルブラッド・マスターズ・アワード: 写真家を対象とした国際的な賞です。
* ハッセルブラッド財団: ハッセルブラッド国際写真賞の運営や各種助成事業を行っています。

ハッセルブラッドは、その歴史と卓越した技術により、これからも写真業界を牽引する存在であり続けるでしょう。

もう一度検索