中心小体

中心小体とは

中心小体は、真核細胞に存在する細胞小器官であり、中心体の主要な構成要素です。通常、2個1組で垂直L字型に結合した二量体として存在し、中心体マトリックスに囲まれた構造が中心体として機能します。中心小体は細胞分裂において重要な役割を果たし、その複製や構造は厳密に制御されています。

中心小体の複製

中心小体は細胞分裂の際に複製され、各娘細胞に均等に分配されます。この複製は細胞周期のG1期とS期の間に起こり、既存の母中心小体の側面から娘中心小体が形成されます。複製過程は以下の通りです。

1. G1期からS期: 母中心小体の側面に娘中心小体が形成されます。
2. G2期からM期: 娘中心小体が伸長し、細胞分裂によって各娘細胞に受け継がれます。
3. G1期: 受け継がれた中心小体は分離し、娘中心小体が新たな母中心小体となります。この際、古い母中心小体は区別されます。

中心小体の形成には、カートホイールと呼ばれる構造が重要な役割を果たします。カートホイールは自転車の車輪のような構造で、娘中心小体の形成初期に現れ、微小管の形成を誘導します。PLK4と呼ばれるキナーゼは、カートホイール形成のマスター制御因子であり、その過剰発現や阻害によって中心小体の複製が制御されます。

中心小体の構造

ヒトの中心小体は、直径約250nm、長さ約400nmの円筒状の構造をしており、9つの三連微小管（トリプレット微小管）が環状に並んでいます。各微小管は、中心小体の軸に近いものから順にA微小管、B微小管、C微小管と呼ばれます。

A微小管: 13本のプロトフィラメントから構成されます。
B微小管: A微小管の側面で形成され、9本のプロトフィラメントから構成されます。
C微小管: B微小管の側面で形成され、8本のプロトフィラメントから構成されます。

中心小体の構造を安定させるために、A-Cリンカー、インナースキャフォールド、カートホイールなどの構造が存在します。A-CリンカーはA微小管と隣接するC微小管を繋ぎ、インナースキャフォールドは中心小体の内部から構造を支えます。カートホイールは娘中心小体のみに存在し、中心小体の複製に重要な役割を果たします。

古い母中心小体には、Distal appendageとSubdistal appendageと呼ばれる構造が存在します。これらの構造は中心小体の機能に関与しています。

他種の中心小体

生物種によっては、中心小体の構造が異なる場合があります。例えば、キイロショウジョウバエでは二連微小管が、線虫の精細胞では一本微小管が中心小体を構成しています。

中心小体の機能

中心小体は、以下の重要な機能を担っています。

紡錘体の形成: 細胞分裂時に形成される紡錘体の形成に関与します。
細胞質分裂の完了: 細胞質分裂を完了させるために重要な役割を果たします。
鞭毛・繊毛の形成: 鞭毛や繊毛の形成を調節します。中心小体が正常に機能しない場合、鞭毛や繊毛の形成異常を引き起こし、メッケル症候群などの疾病を引き起こすことがあります。

近年では、中心小体がなくても細胞周期が進行する例や、鞭毛・繊毛を欠く以外は正常に成長する変異体も確認されており、中心小体の機能に関する研究が進んでいます。

構成タンパク質

中心小体を構成する主要なタンパク質は以下の通りです。

カートホイール: SASS6, PLK4, STIL
インナースキャフォールド: POC5, POC1B, centrin2, FAM161A
A-Cリンカー: (不明)
Distal appendage: Cep164
Subdistal appendage: ODF2, CEP128
Distal tip: CP110, Cep97

関連用語

中心体
細胞分裂
鞭毛
繊毛

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