中村元恒

中村元恒は、安永7年（1778年）に信濃国伊那郡本郷村（現在の長野県上[[伊那郡]]飯島町）で、医師である中村元茂の長男として生まれました。幼名は紋弥、初名は奛、字は大明、成甫、通称は中書といい、中倧、蕗原翁、不用舎、希月舎などの号を用いていました。

彼は、まず父から医学を学び、その後、寛政4年（1792年）に坂本天山に入門し、儒学を修めました。さらに、見聞を広めるため、寛政13年（1801年）には京都へ上り、中西鷹山に古医方を、猪飼敬所に儒学を学びました。享和2年（1802年）に故郷へ戻ると、文化5年（1808年）に伊那郡大出村（現在の箕輪町）に家塾「不用舎」を開き、儒学と医学を教えました。文化7年（1810年）には高遠藩に藩医兼藩儒として仕官し、師である天山の学説「実学」を藩内に推奨しました。

しかし、嘉永2年（1849年）に藩内の開墾事業をめぐる政争に連座し、領内の黒河内村に流刑となりました。嘉永4年（1851年）に亡くなりましたが、後に赦免されています。

元恒は、医学と儒学の研鑽に励む一方で、郷土史の研究にも熱心でした。特に、子の元起とともに編纂した郷土誌『蕗原拾葉』は、彼の業績の中でも特筆すべきものです。この書物は、当時の信濃国の歴史や文化を伝える貴重な資料となっています。

彼の死後、その功績が認められ、大正7年（1918年）に従五位が追贈されました。

主な著作

『蕗原拾葉』
『周易衍註』
『周易衍翼』
『易学源流論』
『毛詩通解』
『信濃史奇談』
『伊那史略』
『箕輪記』

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