坂本天山

坂本天山は、延享2年（1745年）に信濃国高遠藩で生まれました。幼名は孫八、諱は俊豈といい、遊臥楼と号しました。高遠藩士の家に生まれた天山は、明和5年（1768年）に大坂で砲術を学び始め、帰郷後には『銃陣詳説』を著しました。その後、江戸で復古学を修め、荻野流砲術をさらに深く研究し、「荻野流増補新術」を確立しました。その中で、彼は「周発台」という新しい砲術器具を発明し、自藩の砲術に採用されました。

天山は、砲術家としての活動だけでなく、藩政にも積極的に関わりました。天明3年（1783年）には郡代として治山治水に尽力しましたが、反対勢力によって失脚し、3年間の蟄居生活を送ることになりました。しかし、天山はここで終わらず、脱藩後には大坂、彦根藩、長州藩、大村藩など各地で砲術と儒学を教えました。彼の教えは多くの人々に影響を与え、各地の藩で彼の砲術が採用されることになりました。

享和2年（1802年）には、平戸藩主の松浦清に招かれ、藩士の教育に携わりました。翌年、長崎で病没しましたが、その生涯は、砲術家、儒学者、そして藩士としての多様な顔を持っていました。彼の残した『紀南遊嚢』などの漢詩集は、彼の豊かな学識と感性を今に伝えています。

没後、天山の功績が認められ、大正4年（1915年）に従五位が遺贈されました。また、天山の孫娘である桂が、島崎重韶（島崎藤村の祖父）の後妻となったことも特筆されます。天山は、砲術の発展に貢献しただけでなく、学問と教育にも尽力し、後世に大きな影響を与えた人物として評価されています。

参考文献として、『坂本天山先生遺墨集』（信濃偉人遺墨顕彰会、1933年）、『三百藩家臣人名事典 3』（新人物往来社、1988年）、角憲和著『阪本天山―信州高遠の生んだ明治維新の先覚者』（岳風書房、2000年）などが挙げられます。

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