中村勝己

中村勝己（なかむら かつみ）

中村勝己（1924年〜2013年）は、日本の経済史の第一人者であり、慶應義塾大学の名誉教授として広く知られています。彼は、アメリカの経済史、特に資本主義の成立に関する研究を基盤に、宗教と社会との関係に注目した研究を展開しました。また、自らの信仰体系である無教会主義キリスト教の歴史的背景を探ることにも力を注ぎました。彼の研究会からは著名な学者が輩出され、経済学の発展に多大な影響を与えています。

略歴

中村勝己は1924年に東京府で生まれました。学業は旧制慶應義塾普通部から始まり、その後1942年に慶應義塾大学の経済学部予科に進学します。1944年には海軍に入隊し、1945年に復員した後、1948年に同大学の経済学部を卒業しました。1966年には同学部の助手から教授に昇進し、経済学博士号を取得。また、学位論文によって慶應義塾賞を受賞しています。この間、青山学院大学、早稲田大学、専修大学などで非常勤講師としても活躍しました。1989年には名誉教授の称号を受けました。

家族

中村は医師であった父・中村勝屋と、母・佐多子との間に生まれました。妻は植物学者の矢部吉禎の四女で、長男は古代オリエント学・ヒッタイト学の専門家の中村光男です。

主要著作

中村勝己が著した書籍は多岐にわたり、経済史の研究を深める上で重要な役割を果たしました。代表的な著作には以下のものがあります：

• - 『アメリカ資本主義の成立』(1966年)
• - 『アメリカ資本主義論』(1971年)
• - 『近代文化の構造　キリスト教と近代』(1972年)
• - 『一般経済史』(1976年、改訂版1978年)
• - 『現代社会の構造　経済史家の見た後進国問題』(1984年)
• - 『キリスト教と社会科学』(1994年)
• - 『近代市民社会論』(2005年)

特に『アメリカ資本主義の成立』は、日本における経済史の研究において重要な位置を占めており、資本主義の発展とその背後にある宗教的要因との関連性を深く掘り下げています。また『近代文化の構造　キリスト教と近代』では、キリスト教の影響が近代思想をどのように形成したかを考察しています。

編著・編集

さらに、中村は『受容と変容　近代日本の経済と思想』や『マックス・ウェーバーと日本』といった編著も手がけ、他の学者と協力して日本の経済思想の発展に寄与しました。加えて、矢内原忠雄関連の書籍の解題を編集し、学問の広がりを助けています。

影響

中村勝己の業績は、経済学だけでなく、宗教社会学、文化史，さらに教育の分野においても広範囲にわたります。彼の研究は日本における経済の理解を深めただけでなく、特に宗教と経済が交わる部分に焦点を当てることで、日本の経済政策や乖離した社会現象に新たな視点を提供しました。彼の貢献は、今日の経済研究や社会科学においても燦然と輝いています。

もう一度検索