中村吉治

中村 吉治（なかむら きちじ）の生涯と業績

概要

中村吉治は、1905年に長野県上伊那郡朝日村平出（現在の辰野町）で生まれた歴史学者であり、特に社会史や農民史の研究で知られています。彼は、東北大学の名誉教授としてその名を広めるとともに、数多くの学術著作を残しました。彼の研究は、当時の歴史学界において独自の視点を提供し、社会的な視野を広げるのに寄与しました。

学歴と経歴

中村は地元の朝日尋常高等小学校から始まり、その後長野県諏訪中学校を経て、旧制第三高等学校に進学しました。ここで彼は歴史学に興味を持ち、特に中村直勝教授の講義に影響を受けました。1925年に同校を卒業した後、京都帝国大学に進みましたが、さらなる学問の追求のために東京帝国大学に再入学。卒業論文では「近世初期の農政」というテーマを扱い、1929年に文学部を卒業しました。

卒業後は東京大学史料編纂所での勤務を経て、東北帝国大学法文学部に助教授として就任。1941年には教授に昇進し、1968年には定年退官を果たします。その後は國學院大學の経済学部で教授として教鞭を執りました。彼は1951年に「近世初期に於ける勧農について」を通じて経済学博士号を取得しました。

研究分野と業績

中村の研究は、特に皇国史観が支配的だった当時の歴史学界の中で、農民史や社会史という新しい視点を持ち込むものでした。彼は小野武夫や古島敏雄と共に、雑誌『歴史学研究』や『社会経済史学』で土一揆の考察や農民史に関する研究を発表しました。これらの仕事は、戦後の日本における歴史学の進展に多大な影響を与えました。

また、民俗学の大家である柳田國男との親交を通じて、社會学的な視点も取り入れた彼の社会史研究は、他に類を見ないユニークなものとなりました。特に、農村の共同体に関する研究は高く評価されています。

逸話

中村は東京帝国大学時代、卒業論文の指導教官である平泉澄助教授に、自身の研究テーマを告げた際に、「百姓に歴史はありますか」と冗談混じりに質問されたエピソードが有名です。これに対し、中村は「豚に歴史はありますか」と返されたと語っています。このやり取りは彼自身の著作や『歴史手帖』でも繰り返し言及され、広く知られるようになりました。

所蔵資料

彼の業績や研究は、東北大学史料館で保存されている「中村吉治文書」にて確認することができます。この中には、研究ノートや論文原稿などが含まれ、彼の学問の足跡をたどる貴重な資料となっています。

参考文献

中村吉治の業績に対する評価や彼の学問に関する文献も多く、彼の影響力の大きさを物語っています。彼の著作や論文は今なお研究者や学習者にとって貴重な資料であり、日本の歴史学の発展に大きく寄与しました。彼の生涯と業績は、現在の日本の歴史学界における重要な土台となっています。

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