中村太地 (陸上選手)

中村 太地

中村 太地（なかむら だいち）は、1993年1月15日生まれ、日本の元陸上競技選手である。茨城県笠間市出身。専門種目は砲丸投。

幼少期は陸上競技ではなく、相撲に打ち込んでいた。小学3年生から中学時代まで相撲道場で鍛錬を積み、全国大会への出場経験も持つなど、基礎的な体幹やバランス感覚を培った。

陸上競技を始めたのは、茨城県立笠間高等学校に入学してからである。高校では、円盤投、砲丸投、ハンマー投といった投擲3種目に取り組んだ。高校時代には早くも頭角を現し、2010年5月には県大会において、当時取り組んでいた投擲全3種目で優勝を達成する快挙を成し遂げている。中でも円盤投で顕著な実績を残し、同年8月の全国高等学校総合体育大会（インターハイ）と10月の国民体育大会（少年男子A）の円盤投で二冠を達成した。同年のシンガポールユースオリンピックには円盤投の日本代表として選出されるも、世界とのレベル差を痛感し、14人中12位という結果に終わった。

国士舘大学へ進学後も、高校時代に培った砲丸投と円盤投の練習を継続した。大学では、岡田雅次氏や青山利春氏といった指導者のもと、技術と体力の向上に励んだ。大学在学中に砲丸投の能力が大きく向上し、主要な学生大会で次々と実績を重ねる。2013年に関東学生陸上競技対校選手権大会で優勝、2014年には日本学生陸上競技対校選手権大会で2位入賞を果たすなど、砲丸投を主戦場とする基盤を築いた。

大学卒業後も陸上競技を続けることを希望したが、実業団としての採用先がすぐには見つからなかった。そのため、ミズノの正社員契約ではないものの、競技活動に必要な陸上用品のサポートやマネジメント支援を受けられるクラブチーム「チームミズノアスレティック」に所属することとなった。この期間、競技活動と並行して中学校の授業補助の仕事に就き、自らの生計を立てながら競技を続けた。

転機が訪れたのは2018年である。大阪で開催されたゴールデングランプリ陸上において、男子砲丸投で18メートル85センチの日本新記録（当時）を樹立し、4位に入賞するという歴史的な快挙を成し遂げた。この記録は、日本における砲丸投のレベル向上を示す重要な一歩となった。この実績が認められ、同年8月1日より、ミズノの陸上競技部「ミズノトラッククラブ」に正式に所属が変更となった。

選手としての大きな特徴は、日本では採用者が比較的少ないとされる「回転投法」を駆使することである。115kgという恵まれた体格を、回転運動を通じて巧みに扱い、繊細かつ力強い投擲を行うのが持ち味であった。この回転投法への挑戦は大学進学後から本格的に始まったものであり、中村氏自身は、高校時代に円盤投で培った回転技術やバランス感覚が、砲丸投での回転投法習得に大きく役立ったと語っている。大学時代以降、円盤投よりも砲丸投でより高い成績を残すようになり、実業団では砲丸投を主戦種目としたが、2018年頃には円盤投の大会にも引き続きエントリーするなど、投擲選手としての多才さも見せた。

2022年11月、所属先のミズノを通じて現役からの引退を表明した。引退後は、これまでの競技経験や培った知識を活かし、教員や陸上指導者として後進の育成に携わる意向を示している。日本の砲丸投界を牽引した経験を、次世代に継承していくことが期待されている。

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