中村歌右衛門

中村歌右衛門

中村歌右衛門（なかむら うたえもん）は、歌舞伎役者の名跡です。屋号は初代と三代目が加賀屋、二代目が蛭子屋、四代目以降が成駒屋。定紋は祇園守、替紋は裏梅です。

概要

元々は上方の役者の名跡でしたが、三代目が江戸に下り、以降は江戸で活躍しました。初代から四代目までは立役でしたが、五代目以降は女形としてその名を馳せました。

五代目の名跡を巡っては、複雑な事情がありました。四代目の養子である四代目中村芝翫の養子、五代目中村芝翫が明治44年（1911年）に襲名した際、四代目の位牌養子である三代目中村翫雀の実子、初代中村鴈治郎が正統性を主張し、激しく争ったのです。この対立は、大正5年（1916年）に和解するまで、共演はおろか同じ土地での競演も憚られるほど深刻でした。

五代目の長男である五代目福助は、父に先立って昭和8年（1933年）に亡くなったため、六代目は五代目の次男が継承することになりました。しかし、五代目福助の遺児である七代目中村芝翫がおり、六代目との年齢差が11歳しかなかったため、再び名跡争いが起こることを五代目が危惧し、遺言で六代目死後は七代目芝翫の家系に「返還」されることとなりました。

しかし、六代目と七代目芝翫は年齢が近かったため、七代目芝翫は歌右衛門を襲名しないまま、平成23年（2011年）に83歳で亡くなりました。代わりに、七代目芝翫の長男である九代目福助が七代目を襲名予定でしたが、平成25年（2013年）に脳出血で倒れたため、2024年現在、襲名は見送られています。

ちなみに、七代目没後空き名跡となった「芝翫」は、七代目芝翫の死から5年後の2016年に、七代目芝翫の次男が八代目芝翫を襲名しました。近代では「芝翫」は歌右衛門の前名として扱われていましたが、七代目芝翫の次男が襲名したことで、独立した名跡となりました。

現在ある中村姓の名跡は、中村勘三郎系と中村富十郎系を除き、すべてこの歌右衛門系となっています。墓所は、初代・三代目が大阪市中央区中寺の正法寺、二代目・六代目が青山霊園にあります。

歴代

初代 中村歌右衛門
初代中村源左衛門の門弟。1714–91。父は加賀金沢の医師・大関俊庵。狂言作者として中村嘉七を名乗りました。
初代中村歌之助 → 初代中村歌右衛門 → 初代加賀谷歌七（隠居名）

二代目 中村歌右衛門
初代の門弟。1752–98。はじめ水木まさのの門弟でした。
初代水木東蔵 → 初代中村東蔵 → 二代目中村歌右衛門 → 初代中村東蔵

三代目 中村歌右衛門
初代の子。1778–1838。狂言作者として金澤龍玉を名乗りました。
初代加賀屋福之助 → 三代目中村歌右衛門 → 初代中村芝翫 → 三代目中村歌右衛門 → 中村玉助（隠居名）

四代目 中村歌右衛門
三代目の門弟で後に養子。1798–1852。
藤間亀三郎 → 中村藤太郎 → 初代中村鶴助 → 二代目中村芝翫 → 四代目中村歌右衛門

五代目 中村歌右衛門
四代目の養子・四代目中村芝翫の門弟で後に養子。1866–1940。実父は幕府金座役人でした。
初代中村兒太郎 → 成駒屋四代目中村福助 → 五代目中村芝翫 → 五代目中村歌右衛門

六代目 中村歌右衛門
五代目の子。1917–2001。戦後を代表する立女形でした。
三代目中村兒太郎 → 六代目中村福助 → 六代目中村芝翫 → 六代目中村歌右衛門

外部リンク

* 成駒屋について（家系図） - 成駒屋公式Webサイト

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