金座

金座（きんざ）とは

金座とは、江戸幕府において金貨の鋳造、鑑定、検印を担った場所、あるいはその組織のことです。江戸幕府の貨幣制度において、非常に重要な役割を果たしていました。

金座の成立と変遷

金座の始まりは、文禄4年（1595年）に徳川家康が京都の金細工師、後藤庄三郎光次に命じ、江戸で小判を鋳造させたことに遡ります。江戸幕府成立後、金座は留守居、次いで勘定奉行の支配下に置かれ、江戸本石町に役宅が設置されました。

金座が成立して以降、後藤家は御金改役（ごきんあらためやく）として、本石町の役宅で金貨の鑑定と検印のみを行い、実際の鋳造は小判師（こばんし）と呼ばれる職人たちが担当しました。小判師たちは小判座（こばんざ）と総称され、後藤宗家が居住していた本石町の金座役宅周辺に施設を構え、その支配下に置かれていました。そのため、御金改役を世襲した後藤宗家は、小判座（小判師職人）の元締めという意味を込めて、大判座（おおばんざ）とも呼ばれました。

しかし、管理の厳格化と小判師の分散化を防ぐため、元禄11年（1698年）に邸外の鋳造施設は廃止され、金座役宅（後藤宗家邸）の敷地内に鋳造施設が設置されました。これ以降、江戸での金貨鋳造は、この場所でのみ行われることになりました。さらに、明和2年（1765年）以降には、小額の銅銭鋳造の業務を銀座と分担して行うようになり、それまで主に民間の商人による請負事業であった銭座が金座の統制下に置かれました。特に、天保6年（1835年）に御金改役の後藤三右衛門光亨の建策により発行された天保通寳は、金座主導で鋳造され、その裏側には金座の後藤庄三郎光次の花押が鋳出されています。

後藤家は、宗家が文化7年（1810年）に役目の不正があったとして取り潰され、後任の御金改役を命じられた分家も、弘化2年（1845年）に幕府批判をしたとして取り潰されました。その後、江戸に帰還を許されていた旧宗家の末裔が再興を許され、御金改役に復帰して幕末まで金座を管理しました。

当初、金座は江戸以外にも駿府、京都、佐渡（後に甲府）にも置かれましたが、後に江戸に一本化されました。ただし、寛政3年（1791年）に鋳造を停止された京都の姉小路車屋町にあった金座は、その後も廃止されず、禁裏御用の金細工や上方における金職人統制などを、後藤家の支配下で幕末まで行っていました。また、佐渡と甲府の金座も文政年間までは鋳造を行っていました。

公式には、慶応4年4月17日（1868年5月9日）に官軍によって江戸の金座・銀座が占領された時に廃止されました。しかし実際には、接収された金座は新政府貨幣司の統制下となり、明治政府の軍費支払いに充てるために、翌年2月まで新政府が用いる金貨を鋳造していました。しかし、改税約書違反の悪質な金貨を鋳造していた事実が明らかとなり、諸外国からの抗議を受けたため、明治政府が太政官札への全面切り替えと新しい造幣施設建設を決定し、金座は廃止されました。

金座の所在地と現在

東京都中央区日本橋浜町には、昭和初期に「金座通り」という道路が整備されました。また、静岡市には、現在も小判が鋳造された場所が金座町という町名として残っています。同様に、銭座町という町名も存在します。

小判の鋳造法

小判の鋳造は、厳格な手順で行われていました。まず、後藤手代が立ち会い監視の下、地金の精錬が行われました。金山から購入した山出金、古金貨、輸入印子金などを溶解し、食塩や硫黄を加えて含まれる銀と反応させ精錬し、一定の品位の焼金としました。この焼金の品位は、試金石を用いて手本金と比較して改められました。

次に、焼金と花降銀（純銀）を規定の品位になるように秤量し、坩堝で溶解して竿金としました。金座人がこの地金を受け取り、一定の目方に切断して小判型に打ち延ばしました。表面には鏨目が打たれ、計量検査が行われた後、棟梁と座人の験極印が打たれ、後藤手代に渡されました。さらに検査が行われ、扇枠の桐極印、額面などの極印が打たれ、金座人に返されました。

仕上げは、小判に食塩、硝石、丹礬、緑礬、薫陸などの薬剤を塗り、火で焙って色揚げを行い、金色を整えました。最終検査に合格した小判は、百両単位で包封金として勘定所に上納されました。

脚注

関連項目

銀座
銭座
銅座
小判
一分判

外部リンク

江戸時代の貨幣鋳造機関（金座、銀座、銭座）の組織と役割─金座を中心として 大貫摩里、日本銀行金融研究所/金融研究/1999. 9

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