中村直

中村直：岩手県政を牽引した巨星

1912年、岩手県紫波郡紫波町に生まれた中村直は、1996年8月3日に83歳でその生涯を閉じました。身長180センチ、体重80キロという恵まれた体格を誇った彼は、日本の政界において、特に岩手県政に大きな足跡を残した人物として知られています。

岩手県農学校、産業組合学校を卒業後、産業組合職員などを経て、1938年には岩手県職員となりました。着実にキャリアを積み重ね、岩手県副知事や岩手銀行専務などを歴任。政治の世界へ足を踏み入れるのは、50歳を過ぎてからのことでした。1976年に行われた第34回衆議院議員総選挙で岩手県第1区から出馬し、初当選を果たします。

しかし、国会議員としての活動期間は2年3ヶ月と短く、1979年に岩手県知事に就任。以後、3期12年にわたって岩手県政のトップとして県民を導きました。

知事在任中は、数々の実績を残しています。特に注目すべきは、三陸鉄道の第三セクター化です。これは全国でも初めての試みであり、地方鉄道の維持・発展に大きく貢献しました。また、岩手めんこいテレビの開局にも尽力するなど、県内のメディア環境整備にも貢献しています。

しかし、中村知事の政治家人生は、常に順風満帆だったわけではありません。1983年の岩手県知事選挙において、リクルート事件に絡む問題が浮上しました。リクルートと岩手県が共同で経営していた第三セクター、安比総合開発の役員から、中村知事の後援会が現金約30万円を受け取っていたことが発覚し、1989年3月6日の県議会において、中村知事はこれを認めました。この事件は、彼の政治家としてのイメージに大きな傷を与えました。

高齢も理由の一つとなり、4選を目指さず1991年に知事を退任。その功績を称えられ、1992年4月29日には勲二等旭日重光章を受章しています。

鈴木善幸を政治の師と仰ぎ、地元岩手県の発展に尽力した中村直。その政治家人生は、地方行政における数々の功績と、リクルート事件への関与という、光と影が交錯する複雑なものでした。しかし、彼が岩手県政に与えた影響は大きく、その名は県民の記憶に深く刻まれていると言えるでしょう。彼の功績と、その複雑な政治的キャリアは、日本の地方政治史において重要な一章を刻んでいます。そして、大柄な風貌と、県民のために尽力したその姿は、今もなお多くの人々の記憶に深く刻まれています。

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