中東呼吸器症候群

中東呼吸器症候群 (MERS)

中東呼吸器症候群（MERS）は、MERSコロナ[[ウイルス]]（MERS-CoV）が引き起こすウイルス性の呼吸器疾患で、2012年にサウジアラビアで最初に確認されました。このウイルスは主にヒトコブラクダを感染源とし、ラクダとの接触や、その製品の摂取を介して感染が広がることが報告されています。日本では2014年に指定感染症に指定され、その後2015年には二類感染症として位置付けられました。

感染の特徴と症状

感染から2日から14日の潜伏期を経て、無症状から重篤な呼吸器症状を引き起こします。代表的な症状には、発熱、咳、呼吸困難、肺炎、場合によっては腎不全や下痢、さらには敗血性ショックが含まれることがあります。特に高齢者や糖尿病、腎不全などの基礎疾患を持つ方は重症化するリスクが高いとされています。

感染経路と流行

初期の感染源であるヒトコブラクダに関する理解が進み、現在ではこの動物が主な宿主であるとされています。感染の流行が見られた地域は中東に限られず、韓国でも2015年に大規模な感染が発生しました。この際、WHOは緊急の注意を促し、感染拡大を防ぐための努力が求められました。

2019年の時点で、世界中で感染が確認されたケースは2494人、死者は858人に達しています。また、特に問題視されたのは医療機関での感染拡大であり、看護師や医療関係者が感染する事例も多く見られました。実際、韓国でのアウトブレイクでは、多数の二次感染が発生し、国を超えた感染拡大の懸念が強まりました。

診断と治療

MERSの診断は、主に鼻咽頭や中咽頭の検体、または下気道のサンプルを用いたPCR検査が行われます。治療については、特効薬が確立されていないため、対症療法が中心となります。具体的には、肺炎に対する抗炎症薬や急性呼吸窮迫症候群に対する人工呼吸などが行われます。

また、治療に関してはリバビリンなどの抗ウイルス薬の有効性が示唆されていますが、臨床試験の結果はまだ不明確です。加えて、各国でのMERS治療の取り組みが続けられており、新たな治療法の発見が期待されています。

予防策

感染予防については、手洗いやマスク着用、接触する物品の消毒が基本的な対策とされています。特に、病気の人との接触を避けること、旅行の際の注意も重要です。航空機などでは体温スクリーニングが行われますが、発熱が確認されにくい初期段階では限界があります。

現在の流行状況

2020年現在も流行は続いており、中東地域を中心に感染が見られます。政府や国際機関は、国民の健康を守るために予防策や情報提供を強化しています。WHOは、感染地域を限定しない新たな名称選定を提案しており、感染症名が歴史や地理に基づくことへの問題提起も行われています。これからも取り組みが続く中、MERSへの理解を深め、感染拡大防止に努めることが求められています。

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