中東欧の日本語教育

中東欧の日本語教育

中東欧における日本語教育は、1970年代から始まり、地域によって異なる発展を遂げてきました。この地域での日本語教育は、単に言語を教えるだけでなく、異文化理解や国際交流を促進する重要な役割を担っています。本稿では、中東欧13カ国（ハンガリー、ポーランド、チェコ、ブルガリア、ルーマニア、スロベニア、スロバキア、クロアチア、セルビア、モンテネグロ、ボスニア、マケドニア、コソボ）における日本語教育の現状と歴史について詳細に解説します。

沿革

中東欧における日本語教育の初期の動きは、1975年にユーゴスラビア（現セルビア）のベオグラード大学で日本語講座が開講されたことに始まります。その後、1980年代にはスロベニアでボランティアによる日本語講座が始まり、1986年にはチェコスロバキア（現スロバキア）のコメンスキー大学で日本語コースが開設されました。1990年代に入ると、スロバキア、スロベニア、クロアチア、マケドニアで日本語教育機関が相次いで設立され、中東欧における日本語教育の普及が加速しました。

2000年代には、ボスニアやモンテネグロでも日本語教育が始まりましたが、2000年代後半には、マケドニアの講座が一時休止するなど、教育機関の維持・運営における課題も浮き彫りになりました。しかし、2010年代には、セルビアで日本語教師会が設立され、中東欧日本語教育ネットワーク会議が開催されるなど、地域間の連携が強化される動きが見られました。また、2014年には、三菱商事の支援により、セルビアの複数の小学校・高校で日本語授業が開始され、スロバキアでは日本センターが開設されるなど、新たな展開も見られました。

教育段階別の状況

初等教育段階

中東欧において初等教育段階で日本語教育を行っている学校は限られており、クロアチア内陸地方東部のスティエパン･ラディチ小学校が唯一の例です。これは、初等教育における日本語教育の普及にはまだ課題が多いことを示しています。

中等教育段階

中等教育段階では、クロアチアのザグレブ第7高等学校、ザグレブ芸術高等学校、セルビアのベオグラード語学専門高等学校などで日本語が教えられています。また、スロベニアの一部の高校では、課外活動として日本語教育が行われています。これらの学校では、第二外国語の選択科目や課外活動を通じて、日本語を学ぶ機会が提供されています。

高等教育段階

高等教育機関では、多くの大学で日本語が学ばれています。クロアチアではザグレブ大学哲学部日本研究コースやザグレブ経済経営大学、スロバキアではプレショウ大学、スロベニアではリュブリャナ大学文学部アジア・アフリカ研究学科日本研究講座が日本語教育の拠点となっています。また、セルビアのベオグラード大学、メガトレンド大学、Braca Karic大学、マケドニアの聖キリル・メトディウス大学（課外授業）でも日本語が学べます。これらの大学では、専門的な日本語教育が行われ、日本文化や社会に関する研究も進められています。

成人教育

一般市民を対象とした成人教育も行われており、スロベニアのリュブリャナ大学及びマリボル大学の一般公開講座、セルビアのノビ・サド日本友好協会の一般公開講座、マケドニアの聖キリル・メトディウス大学の一般公開講座などが挙げられます。これらの講座は、地域住民が日本語や日本文化に触れる機会を提供しています。

日本語教師会

中東欧では、日本語教師の連携を強化するための教師会が設立されています。チェコ日本語教師会（スロバキアの教師も含む）、クロアチア日本語教師会などが活動していますが、ブルガリアの日本語教師会は2012年に解散しています。教師会は、情報共有や研修機会の提供を通じて、日本語教育の質の向上に貢献しています。

最近の動向

近年、中東欧における日本語教育は、教育機関の増加や教師会の連携強化により、着実に発展しています。しかし、地域によって日本語教育の普及度や教育環境には差があり、今後の課題として、教育資源の確保や教師の育成、地域間の連携強化などが挙げられます。今後、中東欧における日本語教育は、更なる発展と地域間の協力によって、より豊かなものになることが期待されます。

関連項目

セルビアの日本語教育
日本とクロアチアの関係#クロアチアにおける日本語教育

出典

国際交流基金(2009)『海外日本語教育機関調査』国際交流基金
国際交流基金(2010)『日本語教育国別情報』

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