中根金作

中根 金作（なかね きんさく）

「昭和の小堀遠州」とまで称えられた、日本を代表する造園家・作庭家。1917年（大正6年）8月28日に静岡県磐田郡天竜村（現在の磐田市）に生を受け、1995年（平成7年）3月1日にその生涯を閉じた。日本の伝統的な庭園文化を深く理解しつつ、国際的な視野を持って数多くの名庭を創造した人物である。

経歴

中根金作は、静岡県立浜松工業学校（現在の静岡県立浜松工業高等学校）で学んだ後、一時は外資系企業で図案制作の仕事に携わっていた。しかし、やがて造園の道に進むことを志し、東京高等造園学校（現在の東京農業大学造園科学科）に進学して専門的な知識と技術を修得した。

学校卒業後の1943年（昭和18年）、京都府に園芸技師として任用され、公職のキャリアをスタートさせた。京都府庁では、文化財保護課の課長補佐などを務め、日本の貴重な文化財庭園の保護・管理に携わった経験は、彼の作庭活動の基礎を築く上で非常に重要なものとなった。公職を務めた後、彼は自らの意思で退職し、独立の道を歩み始めた。

独立後もその活動は多岐にわたり、裏千家学園茶道専門学校で講師を務めるなど教育にも携わった。また、1966年（昭和41年）には自身の理念に基づいた作庭を行うため、中根庭園研究所を設立した。さらに、大阪芸術大学や浪速短期大学で学長を務めるなど、後進の育成や文化・芸術振興にも尽力した。

作庭活動

中根金作の最大の功績は、国内外で約300にも及ぶ庭園を手がけたことである。その作風は、伝統的な日本庭園の様式美を踏まえつつ、現代的な感性や国際的な視点を取り入れた独自の境地を開いたと評価されている。彼の庭園は、単なる景観の美しさだけでなく、自然との調和、精神性の表現、そしてその場所ならではの物語性を湛えている。

特に有名な作品としては、島根県の足立美術館庭園（昭和44年～47年作庭）が挙げられる。この庭園は「庭園もまた一幅の絵画である」という美術館創設者の思想に基づき作庭され、借景を巧みに取り入れた枯山水庭や池庭などが一体となり、四季折々の美しい景観を織りなしている。この庭園は、海外の日本庭園ランキングで高く評価されるなど、中根金作の名を世界に知らしめる代表作となった。

その他の主要な作品には、京都の城南宮楽水苑（昭和29年～35年）、退蔵院余香苑（昭和38年～41年）、大阪の大仙公園日本庭園（昭和60年～63年）など、日本の名所として知られる庭園が多数含まれる。また、海外での活動も積極的に行い、シンガポールのジュロン・タウン日本庭園星和園（昭和45年～46年）、アメリカ合衆国のボストン美術館天心園（昭和59年～62年）やジミー・カーター・プレジデントセンター日本庭園（昭和59年～61年）など、日本庭園の美しさと精神性を世界に広める役割を果たした。

受賞歴

その卓越した技術と功績は国内外で高く評価され、数々の栄誉に輝いている。

日本造園学会賞（1969年）
ウィーン国際園芸博覧会におけるオーストリア国農林大臣銀賞、全オーストリア園芸協会金賞（1974年）
東京農業大学 造園大賞（1981年）
日本公園緑地協会 公園緑地北村賞（1982年）
全国日本学士会 アカデミア賞（1982年）
建設省第5回都市公園等コンクール 建設大臣賞（1989年）：大仙公園日本庭園にて受賞
日本造園コンサルタント協会賞特別賞（1990年）：ヴェルツブルク市日本庭園にて受賞
大阪市民表彰（1991年）
日本造園学会 上原敬二賞（1994年）
正五位勲三等瑞宝章（1995年）

これらの受賞歴は、彼の作庭家としての実力と、日本庭園の発展及び国際的な普及に貢献した功績の大きさを物語っている。

著書

彼は著書を通して、自身の庭園に対する思想や、日本の名庭の魅力を広く紹介した。

『京の名庭』（保育社カラーブックス、1963年）
『KYOTO GARDENS』（保育社カラーブックスENGLISH EDITION、1965年） - 『京の名庭』の英語版。

まとめ

中根金作は、伝統的な日本庭園の様式を受け継ぎつつ、現代的な視点と国際感覚を取り入れた作庭により、「昭和の小堀遠州」と称されるにふさわしい業績を残した。約300もの庭園を国内外に創造し、日本庭園の美しさと精神性を世界に発信し続けた彼の功績は、現代日本庭園史において極めて大きなものとして記憶されている。

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