中甚兵衛

中甚兵衛：大和川の流れを変えた農民

中甚兵衛（なか じんべい）は、寛永16年（1639年）に生まれ、享保15年（1730年）に没した江戸時代初期の農民です。彼は河内国河内郡今米村（現在の大阪府東大阪市今米）の庄屋であり、大和川の付け替え工事に生涯を捧げました。

大和川付け替えへの情熱

当時、大和川は頻繁に氾濫し、周辺の村々は深刻な被害を受けていました。甚兵衛は、この状況を改善するため、芝村の曽根三郎右衛門や兄の太兵衛らと共に、大和川の付け替えを幕府に嘆願することを決意します。

その嘆願活動は実に46年にも及びました。甚兵衛は農民でありながら、幕府の役人たちと交渉を重ね、ついには付け替え工事の指揮を執るまでに至ります。彼の行動力と強い意志は、多くの人々に感銘を与えました。

関係者の尽力と課題

大和川の付け替え工事は、甚兵衛一人の力で成し遂げられたものではありません。彼の父や家族、そして初期の嘆願活動に関わった人々など、多くの協力者の存在がありました。しかし、これらの関係者に関する記録は、甚兵衛の子孫による調査と通説とで異なっている部分があり、混乱が見られます。

現在、十代目の子孫である中九兵衛氏が、史料の発掘・調査を行い、通説の訂正に取り組んでいます。

年表から見る甚兵衛の生涯

1638年（寛永15年）：吉田川の堤防が決壊。今米村は大きな被害を受ける。
1639年（寛永16年）：中甚兵衛誕生。
1657年（明暦3年）：19歳で江戸に下り、大和川の付け替えを嘆願。以後、15年間にわたり江戸に滞在し、訴えを繰り返す。
1660年（万治3年）：幕府が派遣した役人が初めて大和川付け替えの検分を行う。
1672年（寛文12年）：3度目の計画も中止となり、甚兵衛は一旦帰郷。
1673年（寛文13年）：結婚。
1674年（延宝2年）：寅年大洪水が発生。甚兵衛は再び付け替えの必要性を痛感する。
1687年（貞享4年）：河村瑞賢による治水工事が終了。大和川の付け替え嘆願は一時禁止となる。
1702年（元禄15年）：甚兵衛が堤奉行に力量を認められ、普請御用を命じられる。
1703年（元禄16年）：大和川の付け替えが正式に決定。甚兵衛は甚助と改名。
1704年（元禄17年）：新大和川の築造工事が開始。
1704年（宝永元年）：新大和川が開削。
1705年（宝永2年）：甚兵衛は出家し、乗久と号する。
1730年（享保15年）：92歳で死去。
1914年（大正3年）：従五位を追贈される。

大和川付け替え工事の関係者たち

幕府

片桐石見守貞昌：大和小泉藩藩主。付け替えの見分を行う。
岡田豊前守善政：勘定奉行。付け替えの見分を行う。
万年長十郎頼治：代官、堤奉行。大和川付け替え工事の責任者。

河内農民

曽根三郎右衛門：芝村の庄屋。甚兵衛の同志。
山中治郎兵衛：吉田村の庄屋。甚兵衛の同志。
中九兵衛：甚兵衛の子。付け替え工事に協力。

商人

河村瑞賢：大和川の治水に取り組んだが、付け替えには反対した。

助役を命ぜられた各藩

姫路藩
明石藩
岸和田藩
三田藩
高取藩
柏原藩


中甚兵衛の功績は、現代においても高く評価されています。彼の不屈の精神と地域への貢献は、後世に語り継がれるべきでしょう。

もう一度検索