中華民国臨時約法

中華民国臨時約法とは

中華民国臨時約法は、1912年に中華民国で制定された憲法的性質の法律で、国家の基本的な枠組みを提供しました。この約法の制定は、辛亥革命の成功の後、孫文が初代臨時大総統となり、中華民国が成立したことを受けての出来事でした。この時、中国は清王朝の影響のもと、北と南に分裂した状況にありました。

臨時約法成立の経緯

1912年1月1日、孫文は南京で中華民国臨時政府を発足させましたが、依然として清王朝が北京に存在していました。孫文は分裂を平和的に解決するため、清朝皇帝の退位を条件に、袁世凱にその地位を譲ることを約束しました。袁世凱の勧めにより、2月12日に宣統帝は退位し、南京政府は2月15日に袁世凱を新たに臨時大総統として選出しました。袁世凱は3月10日に就任し、翌日の3月11日に臨時約法を公布しました。この法律は、専門的知識を持たない当時の政府にとって、権力の集中を防ぐための重要な枠組みとなりましたが、袁世凱は次第にその権力を拡大し、法律を無視するようになりました。

改廃の経歴

臨時約法の歴史は、いくつかの改廃を経て進展しました。1912年3月11日に公布されたこの約法は、1914年5月1日に袁世凱の新たな「中華民国約法」により廃止されました。臨時約法はあくまで暫定的な性質を持ち、正式憲法の基盤として利用される計画がありましたが、袁世凱の専制政治の願望とは一致しませんでした。これにより、袁世凱は自分に適した新しい法律を制定しました。

1916年、袁世凱が死去した後、大総統に就任した黎元洪は臨時約法を復活させる決定をしましたが、彼もすぐに政権基盤が弱いために失脚しました。その後、1917年には広東に中華民国軍政府が設立され、孫文が大元帥に就任し、護法運動を展開しました。この運動は臨時約法を守ることを目的としたものでしたが、中国は再び南北分裂の道を辿ることとなりました。

主要内容と特徴

臨時約法には以下のような主要な内容が含まれています：
1. フランス式の責任内閣制：大統領制に内閣制を導入し、権力の分散を図りました。
2. 簡潔な文字での規定：国家の要素に関する基本的なルールを明確に示しました。
3. 人民の権利と義務の明確化：市民の権利や義務を詳細に保障し、保留条項も設けています。
4. 大総統・副大総統の選挙制：参議院による選任が定められました。
5. 司法の独立：三権分立の原則に基づき、司法権が独立していることを強調しました。

条文の概要

臨時約法は全56条から構成され、国家の組織と市民の権利を定める内容が明確に記されています。たとえば、第1条では「中華民国は、中華人民がこれを組織する」とし、国民の権利と比較的高度な平等主義を示しています。また、第12条では人民が選挙権を持つことも強調されています。

まとめ

中華民国臨時約法は、中華民国の成立を支えた基本法であり、国の政治的枠組みを確立するための重要な文書でした。約法の改廃や改正は、当時の政治状況や権力の変遷を反映しており、その後の中華民国の歴史に深い影響を及ぼしました。

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