護法運動

護法運動：孫文による中華民国臨時約法擁護の戦い

護法運動は、1917年から1922年にかけて、孫文の指導のもと、中華民国北京政府の打倒を目指した運動です。中国国民党の歴史では「第三革命」とも呼ばれます。

運動の背景

辛亥革命後、中華民国臨時約法に基づき国会が開かれましたが、宋教仁の暗殺、袁世凱による国会解散と臨時約法の廃止、さらには皇帝即位（洪憲帝制）など、政治的混乱が続きました。袁世凱の死後、黎元洪と段祺瑞の対立（府院の争い）、張勲復辟事件などを経て、段祺瑞が国会を解散し、臨時約法を否定する新政府を樹立しました。

第一次護法運動

1917年7月、孫文は広州に戻り、解散させられた国会議員に新政府の組織を呼びかけました。程璧光率いる海軍の支援を受け、8月には広州で国会非常会議が開催され、臨時約法を守るための軍政府が組織されました。孫文は大元帥に選出され、広東軍政府を樹立し、段祺瑞政府に対抗しました。

護法戦争

広州と北京の両政府が対峙する中、広西省や雲南省などの西南軍閥が広東軍政府を支持しました。湖南省での戦いでは段祺瑞の侵攻を退けましたが、その後、馮国璋の命令で曹錕が湖南省に侵攻し、護法軍は敗北しました。最終的に、徐世昌が和平を主張し、護法戦争は終結しました。

軍政府の改組と第一次護法の終結

孫文は軍事的な基盤が弱く、クーデターを試みましたが失敗。広西派の勢力が強まり、1918年5月には軍政府が改組され、孫文は大元帥の職を辞し、上海へ向かいました。これにより、第一次護法運動は終結しました。

第二次護法運動

孫文は陳炯明の支援を得て広東派を形成し、1920年に広州軍政府を奪還、再び軍政府を樹立し、第二次護法を開始しました。1921年には大総統に選出されましたが、その合法性は疑問視されました。陳炯明は陸軍総長などの要職を占め、強大な権力を握るようになりました。

陳炯明の離反と第二次護法の失敗

孫文が北伐を主張したのに対し、陳炯明は広東省の基盤固めを優先しました。1922年、陳炯明は孫文に下野を迫り、総統府を砲撃（六・一六事変）。孫文は広州を離れ上海へ逃れ、第二次護法運動は失敗に終わりました。

護法運動の影響

二度の護法運動は、軍人の支持を失ったことで失敗に終わりましたが、孫文は自ら軍隊を創設し革命を進める決意を固めました。ソ連の支援を受け、中国国民党を再編・強化し、第一次国共合作を実現、黄埔軍官学校を設立しました。護法運動の理念は、その後の北伐で結実することになりました。

護法運動に対する評価

一部の歴史家は、広州における非常国会の定足数不足などから、軍政府の合法性を疑問視しています。また、孫文が別の政府を樹立し、武力による中国統一を図ったことが、中国分裂の状態を招いたと指摘する意見もあります。

資金援助

近年発表された研究資料によると、第一次護法運動前に孫文は第一次世界大戦の中国参戦に反対し、ドイツ帝国政府から資金援助を受けていたとされています。

護法運動は、孫文の革命運動における重要な転換点であり、その後の中国の歴史に大きな影響を与えました。

もう一度検索