中西勝

中西勝（1924年4月11日 - 2015年5月22日）は、日本の洋画家です。彼の作品は、第二次世界大戦後の人々の暮らしを、抒情的かつ詩的に描き出したものが中心でした。時には、自身の戦争体験を踏まえた作品も制作しました。しかし、1965年、妻と共に自動車で世界一周の旅に出たことをきっかけに、その作風は大きく変化します。世界各地で目にした人間の力強さや、生命の根源をテーマにした作品へと展開していきました。

生い立ちと画業の始まり

1924年、中西勝は現在の大阪市城東区で生まれました。大阪府立四條畷中学校在学中から油絵に興味を持ち、保田龍門のアトリエでデッサンを学びました。その後、帝国美術学校西洋画科に入学すると同時に、川端画学校にも通い、本格的に絵画の道へと進みます。

戦争と帰還

1944年、中西は学徒動員により出征し、中支那派遣軍に配属されました。しかし、軍人としての規律を守ることに苦労し、脱走を試みるなど問題行動もあったとされています。終戦後の1945年9月から、湖北省の俘虜収容所で過ごし、1946年5月に帰国しました。この戦争体験は、彼の作品に大きな影響を与えることになります。

戦後の活動と作風の変化

帰国後、中西は大阪市立美術館付設美術研究所に通いながら、1947年に帝国美術学校を卒業しました。1949年からは神戸市立西代中学校の図画教員となり、神戸市垂水区に居を構えます。同年、田村孝之介に勧められ、第3回二紀展に出品した作品が入賞。これを機に二紀展への出品を重ね、後に二紀会の理事、名誉会員となりました。1969年には神戸学院大学人文学部美術専任教授に就任し、教育者としても活躍しました。1972年には、第15回安井賞を受賞しています。

1965年の世界一周旅行は、中西の作風に大きな変化をもたらしました。それまでの叙情的な表現から、人間の逞しさや生命の根源を追求する、より力強い表現へとシフトしていきました。

後進の指導と晩年

1977年、田村孝之介が神戸市灘区に六甲洋画研究所を設立すると、中西は同研究所の教師として後進の指導に当たりました。1978年には神戸森女子短期大学講師、1988年には同校教授に就任し、教育者としてもその才能を発揮しました。没後の2020年、妻の手により、神戸市東灘区の自宅が改装され、記念館「無字庵」としてオープンしました。この記念館では、中西の作品や愛用品が展示され、彼の芸術への情熱を今に伝えています。

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