中込秀樹

中込 秀樹（なかごめ ひでき）

日本の法曹界において、裁判官、弁護士、そして法学者として多方面で活躍した人物。1941年（昭和16年）6月25日に東京都で生まれた。

法学を志し、1965年（昭和40年）に東京大学法学部を卒業。その後、さらなる研鑽を積むため渡米し、1975年（昭和50年）にはサザンメソジスト大学ロースクールを修了し、比較法修士の学位を取得している。

1965年（昭和40年）、司法研修所に入所し、第19期司法修習生となる。1967年（昭和42年）には東京地方裁判所判事補に任官され、裁判官としてのキャリアをスタートさせた。裁判実務に加えて、最高裁判所事務総局総務局付や行政局参事官、同第二課長といった司法行政の要職も経験し、幅広い視野を培った。また、大阪地方裁判所堺支部での勤務も経ている。

その後、東京地方裁判所判事として主に民事事件を担当するほか、一時、日本国有鉄道総裁室法務課調査役として外部機関での経験も積んだ。裁判官としては着実に昇進を重ね、大阪地方裁判所及び東京地方裁判所で部総括判事として合議体の中心的な役割を担った。1999年（平成11年）には水戸地方裁判所長に就任し、以降、浦和地方裁判所長、さいたま地方裁判所長と地方裁判所のトップを歴任した。さらに、2002年（平成14年）には東京家庭裁判所長を務め、家事事件や少年事件にも深く関わることとなった。

長年にわたる裁判官としての豊富な経験と実績が認められ、2005年（平成17年）には名古屋高等裁判所長官に就任。これは、司法のキャリアにおける最高峰の一つであり、広範な地域の司法行政と裁判実務を統括する重責を担った。2006年（平成18年）に同職を定年退官した。

裁判官退官後は、弁護士として新たな一歩を踏み出し、2006年（平成18年）に第一東京弁護士会に登録。ふじ合同法律事務所にシニアパートナーとして入所し、弁護士業務に従事している。同時に、後進の指導にも熱意を注ぎ、2007年（平成19年）からは帝京大学法学部教授、そして大東文化大学大学院法務研究科（法科大学院）特任教授として教壇に立ち、法学教育に貢献している。

法曹実務家としての経験を活かし、企業のガバナンス強化にも携わっている。株式会社ユニバーサルエンターテインメント、アルゼ株式会社（現ユニバーサルエンターテインメント）では社外取締役、三井倉庫株式会社、JXホールディングス株式会社では社外監査役を務めるなど、企業の透明性向上と適正な経営を監視する役割を果たした。

また、司法及び社会全般における様々な重要課題に対して、専門家としての知見を提供してきた。2006年（平成18年）から新司法試験考査委員（行政法）を務めたほか、公益財団法人自動車製造物責任相談センター理事、厚生労働省の調査プロジェクトチーム顧問などを歴任。特に、近年社会的に注目を集めた企業の不祥事や、行政、報道機関に関する調査において、第三者委員会の委員長や委員として重要な役割を果たしている。具体的には、西松建設株式会社外部諮問委員会委員、国土交通省中央建設工事紛争審査会委員、東京電力株式会社原子力安全・品質保証会議事故調査検証委員会委員、オリンパス株式会社第三者委員会委員、野村ホールディングス株式会社調査委員会委員長、株式会社カネボウ化粧品第三者調査担当弁護士、株式会社みずほ銀行提携ローン業務適正化に関する特別調査委員会委員長、株式会社朝日新聞社慰安婦報道検証第三者委員会委員長、あいちトリエンナーレ名古屋市あり方・負担金検証委員会委員など、その活動範囲は極めて広い。これらの活動は、高度な専門性と中立・公正な判断力が求められるものであり、社会からの厚い信頼を得ていることを示している。

著書としては、『行政事件訴訟の一般的問題に関する実務的研究（改訂版）』（法曹会、1999年）がある。

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