中野孝征

輝かしいアマチュア時代からプロ入りへ

栃木県宇都宮市出身の中野孝征氏は、1944年6月14日に生まれました。中学時代には、遊撃手とリリーフ投手を兼任するなど、早くから野球での才能を見せていました。

高校は野球の名門、作新学院高等学校に進学。1年生にしてレギュラー遊撃手の座を獲得し、才能を開花させます。2年生となった1961年には、春の選抜高等学校野球大会にチームと共に出場。この時は2回戦で敗れましたが、翌1962年には主将、そして一番打者として再び春の選抜の舞台に立ちます。エース八木沢荘六投手（後にプロ入り）を擁し、快進撃を続けた作新学院は、決勝で日大三高を破り見事優勝を果たしました。

さらに、同年夏の全国高等学校野球選手権大会にも連続出場。エース八木沢投手が急病で登板できないという状況下、控えの加藤斌投手（後にプロ入り）が奮闘し、チームは勝ち進みます。決勝では久留米商業高のエース伊藤久敏投手（後にプロ入り）との息詰まる投手戦を1対0で制し、史上初となる甲子園春夏連覇という歴史的快挙を成し遂げました。この伝説的なチームには、八木沢、加藤両投手のほか、4番打者で中堅手の高山忠克氏（後にプロ入り）ら、後のプロ野球選手が名を連ねていました。

高校卒業後、中野氏は社会人野球の道へ進み、岩崎電気を経て強豪の日本楽器に移籍します。日本楽器時代には、都市対抗野球大会で中心選手として活躍。1967年の第38回大会では、準決勝で日立製作所との引き分け再々試合となる激戦を経験し、この連戦で左右に本塁打を放つなど打棒を見せ、チームの決勝進出に大きく貢献しました。決勝では日本石油の平松政次投手（後にプロ入り）に完封され準優勝に終わりましたが、大会を通しての功績が認められ久慈賞を受賞しました。同年には第7回アジア野球選手権大会の日本代表にも選出されるなど、アマチュア球界を代表する内野手として高い評価を得ていました。

プロ野球での挑戦と引退後の人生

アマチュアでの輝かしい実績を引っ提げ、中野氏は1967年のプロ野球ドラフト会議でサンケイアトムズから1位指名を受け、プロ野球選手としてのキャリアをスタートさせました。即戦力として大きな期待を背負っての入団でした。

プロ1年目の1968年シーズン、中野氏は開幕から遊撃手のポジションを任され、30試合に先発出場します。しかし、プロの高いレベルに適応するのに苦労し、打撃面で成績が伸び悩みました。翌1969年には後輩の東条文博氏が台頭するなど、次第に出場機会が減少していきました。

所属球団は、サンケイアトムズからアトムズ（1969年）、そしてヤクルトアトムズ（1970年以降）と球団名が変更される中、中野氏は主に内野の控え選手としてチームを支えました。背番号は、入団から1972年まで「6」を着用し、現役最終年となった1973年には「35」に変更しました。1973年シーズン終了後、中野氏はプロ野球選手としての現役生活にピリオドを打ちました。

プロ野球界を離れた後、中野氏は新たな人生を歩み始めます。まずは東京都内で運送会社に勤務し、会社員として働きました。その後、飲食業界に転身し、東京都渋谷区の代々木上原にて自身で蕎麦店を経営するなど、実業家としての才覚も発揮しました。また、野球への情熱は衰えることなく、渋谷区内の少年野球チームで指導者として若い世代の育成に力を注ぎ、長年にわたり地域野球の発展に貢献しています。

作新学院高校での史上初の甲子園春夏連覇という偉業を成し遂げ、社会人野球でも実績を残してプロ入り。そしてプロ引退後も様々な分野で活躍を続けた中野孝征氏は、野球人生を通じて多くの人々に影響を与えた存在と言えるでしょう。

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