中院

中院（なかいん）

中院は、埼玉県川越市小仙波町に位置する天台宗の寺院です。山号を星野山、寺号を無量寿寺、院号を中院と称します。この寺院は、その長い歴史の中で、天台宗の重要な拠点として、また文化的な遺産を伝える場所として、重要な役割を果たしてきました。

歴史

中院の歴史は平安時代に遡ります。830年（天長7年）、淳和天皇の勅許を得て、慈覚大師円仁によって創建され、当初は無量寿寺仏地院と号しました。その後、鎌倉時代に尊海僧正によって再建され、この時に日蓮が尊海僧正から恵心流の伝法灌頂を受けたという記録が残っています。中院は東国における天台宗の中心的寺院としての地位を確立し、最盛期には580ヶ寺の本山として勅書を受けるほど隆盛を極めました。

無量寿寺には、仏蔵院（北院）、仏地院（中院）、多聞院（南院）が存在し、後伏見天皇は尊海僧正に命じ、関東天台宗の本山としました。また、天台宗の学問所である仙波談義所が開かれ、関東八檀林の一つとして多くの学僧が集まりました。天海大僧正が喜多院（北院）の住職となるまでは、中院が無量寿寺の中心的な役割を担っていました。

仙波東照宮建立の際に、中院は現在地に移転しました。中院の歴史は、以下の出来事によって彩られています。

830年（天長7年）：円仁が淳和天皇の勅許により、仏地院（中院）を建立。
941年（天慶4年）：天慶の乱により、焼失。
1296年（永仁4年）：尊海が成田氏の外護により、伽藍を再建。仙波談義所が開かれる。
1537年（天文6年）：北条氏の侵攻により、焼失。
1632年（寛永9年）：伽藍を再建。
1638年（寛永15年）：川越大火により、焼失。
1639年（寛永16年）：現在の地に移転。
1733年（享保18年）：本堂を再建。
1945年（昭和20年）：釈迦堂・薬師堂、焼失。
1983年（昭和58年）：釈迦堂を再建。
2012年（平成24年）：薬師堂を再建。

文化財

中院は、その歴史的価値から、多くの文化財を有しています。

中院（川越市指定史跡）：寺院全体が川越市の指定史跡となっています。
中院文書（川越市指定有形文化財）：寺に伝わる古文書群は、川越市の指定有形文化財に指定されています。

境内

中院の境内には、歴史と文化を感じさせる様々な見どころがあります。

しだれ桜：春には美しいしだれ桜が咲き誇ります。
加藤みきの墓：島崎藤村の義母である加藤みきの墓があります。藤村は、妻の静子の母である加藤みきと親しく、頻繁に中院を訪れていたと伝えられています。境内には、藤村が加藤みきに贈った茶室「不染亭」や、藤村の書による「不染の碑」も残っています。加藤静子も川越出身で、母である加藤みきとは非常に仲が良かったとされています。
狭山茶発祥之地の碑：中院は狭山茶の発祥の地としても知られています。円仁が京都から茶を持ち帰り、境内で栽培を始めたのが始まりとされています。その後、川越藩領の狭山丘陵で茶の栽培が広まり、狭山茶は元々「河越茶」と呼ばれていました。かつては、境内に茶畑がありましたが、現在は残っていません。
日蓮聖人伝法灌頂之寺の碑：1253年（建長5年）に、日蓮が尊海僧正より恵心流の伝法灌頂を受けたことを記念する碑があります。

交通アクセス

中院へのアクセスは、以下の通りです。

東日本旅客鉄道川越線川越駅から徒歩25分
東武鉄道東上線川越駅から徒歩25分
東武鉄道東上線川越市駅から徒歩20分
西武鉄道新宿線本川越駅から徒歩約15分

脚注

参考文献：「小仙波村 中院」『新編武蔵風土記稿』 巻ノ163入間郡ノ8、内務省地理局、1884年6月。

外部リンク

* 天台宗別格本山中院

中院は、その歴史と文化、自然が織りなす魅力的な寺院であり、訪れる人々に深い感動を与え続けています。

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