串岡弘昭

串岡弘昭：内部告発者としての生涯

串岡弘昭（1946年 - ）は、トナミ運輸の元社員であり、公益通報者保護法制定のきっかけとなった内部告発者として知られています。富山県出身で、明治学院大学法学部を卒業。

大学時代から公益への意識

明治学院大学在学中は読売新聞奨学生として働きながら、法学部で独占禁止法などを学びました。この学びが、後の内部告発の原点となります。

トナミ運輸でのキャリアと談合との遭遇

大学卒業後、幹部候補生としてトナミ運輸に入社。横浜、桶川、岐阜の各営業所を転々とします。1974年、岐阜営業所勤務時代に、過当競争を避けるための談合が行われ、違法な割増運賃が徴収されている状況に直面。業界の慣習に疑問を抱いた串岡は、まず最高幹部に直訴しますが、受け入れられませんでした。

内部告発とその後

会社の方針に失望した串岡は、トラック業界の闇カルテルを読売新聞社名古屋支局に告発。新聞に「50社ヤミ協定か東海道路線トラック」という見出しで報道されました。しかし、この告発が彼のその後の人生を大きく変えることになります。

1975年以降、串岡は研修所への異動を命じられ、32年もの間、草むしり、ストーブへの給油、雪下ろし、布団の整理など、仕事とは言えない雑務のみを与えられました。昇給も一切なく、手取り18万円のまま据え置かれるという不遇な扱いを受けました。さらに、退職を強要するために、暴力団関係者を名乗る者から脅迫を受けるという事態も発生しました。

昇格差別・人権侵害訴訟

2002年1月29日、串岡はトナミ運輸を相手取り、四半世紀に及ぶ昇格差別と人権侵害による経済的・精神的損失として4,500万円の損害賠償と謝罪を求める訴訟を富山地裁に起こしました。2005年、富山地裁は同社に対し1,365万円の支払いを命じる判決を下し、その後、控訴審で1審判決の金額に上乗せした賠償金を支払うことで和解しました。

定年退職後も公益のために

2006年9月20日、トナミ運輸を定年退職。その後も、愛媛県警元巡査部長の仙波敏郎やオリンパスの現役社員と共に「公益通報者が守られる社会を!ネットワーク」を発足させ、内部告発者の権利保護を訴える活動を続けています。

著書

串岡は、内部告発に関する著書も出版しています。

『ホイッスルブローアー（内部告発者）：我が心に恥じるものなし』 桂書房 (絶版)
『「トナミ運輸」内部告発・裁判全記録 ― 闘いにカツラはまだ早い時流れ』 桂書房 (絶版)

串岡弘昭の功績

串岡弘昭の勇気ある行動は、公益通報者保護法の制定を促し、企業におけるコンプライアンス意識の向上に貢献しました。彼の経験は、内部告発者の保護がいかに重要であるかを社会に訴えかけるとともに、組織の不正を告発することの意義を改めて認識させるものとなりました。

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