仙波敏郎

仙波敏郎：警察の内部告発者から阿久根市副市長へ

仙波敏郎（せんば としろう）は、1949年2月14日生まれ。愛媛県警察の元巡査部長であり、警察ジャーナリスト、内部告発者として知られています。彼は、現職警察官として初めて警察の裏金問題を実名で告発した人物です。

生い立ちと警察官としてのキャリア

愛媛県松山市で生まれた仙波は、幼少期に父親を亡くし、経済的に苦しい生活を送りました。1967年に愛媛県立松山東高等学校を卒業後、愛媛県警察に採用されます。警察学校での実力試験では最優秀の成績を収め、1968年に警察官として現場に配属されました。1973年には巡査部長昇任試験に同期最速で合格しています。

しかし、裏金作りのための架空捜査協力費の領収書作成を上司から依頼された際、彼はこれを拒否。この拒否が、その後の彼の警察官人生に大きな影響を与えることになります。領収書の偽造依頼を拒否し続けた結果、16年間で7つの所轄を9回異動するという不遇をかこつことになりました。日本の警察史上最長の巡査部長在任期間35年という記録も持っています。

裏金告発

2005年1月、仙波は愛媛県警察の裏金問題を実名で告発。記者会見後、県警は彼の拳銃を没収しました。その後、鉄道警察隊から閑職である地域課通信指令室企画主任に異動させられるという報復的な配置転換を受けました。配置転換の取り消しを求めて県を相手取り国家賠償請求訴訟を起こし、最終的に勝訴を勝ち取っています。

阿久根市副市長

2010年7月、仙波は鹿児島県阿久根市の副市長に就任します。しかし、この人事は議会の承認を得ないまま市長の専決処分によって行われたため、鹿児島県知事から違法であると批判されました。仙波は無報酬での就任を申し出ましたが、寄付行為とみなされるため、報酬の減額を申し出た上で、減額後の給与を法務局に供託するという異例の対応を取りました。

副市長としては、市職員の労働組合からの脱退を求めるなど、強硬な姿勢も見せました。しかし、議会は仙波の副市長就任人事案を否決。総務大臣からも違法であるとの認識が示され、最終的に仙波は副市長を解任されることとなりました。

その後

副市長解任後も、仙波は阿久根市に残り、行政改革の行方を見守ると発言。竹原信一前市長を支持する市民らと「阿久根を考える会」を設立し、代表に就任しました。2013年には、映画『ゼウスの法廷』に最高裁主席調査官役で出演しています。

仙波敏郎の生涯は、警察内部の不正を告発し、地方自治の現場で改革に挑んだ、波乱に満ちたものでした。彼の行動は、公益通報者保護の重要性や地方自治のあり方について、私たちに多くのことを問いかけています。

関連資料

• - 北海道新聞取材班『日本警察と裏金 -底なしの腐敗』講談社 2005年 ISBN 978-4062750868
• - 原田宏二『警察VS警察官』講談社 2006年 ISBN 978-4062133203
• - 東玲治『ドキュメント・仙波敏郎 -告発警官1000日の記録-』創風社出版 2007年 ISBN 978-4860370978
• - 仙波敏郎『現職警官「裏金」内部告発』講談社 2009年 ISBN 978-4062153591

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