丸尾聡

丸尾聡（まるお さとし）は、1964年1月23日、長野県長野市に生まれた日本の表現者です。俳優、声優、劇作家、演出家、そしてシナリオライターと、その活動範囲は多岐にわたります。長野吉田高校を経て、玉川大学文学部芸術学科演劇専攻で演劇を深く学びました。現在は東京都狛江市を拠点としています。

彼の活動は、長年にわたり主宰した「世の中と演劇するオフィスプロジェクトM」を中心に行われてきましたが、現在は「演劇ネットワーク＠丸尾」の代表を務めています。また、日本の演劇界を支える様々な組織にも積極的に関わっており、日本劇作家協会の運営委員、日本演出者協会の会員、川崎演劇協会の幹事などを歴任しています。

劇作家・脚本家としての貢献

丸尾聡は多作な劇作家として知られ、数多くの戯曲を発表しています。1995年には『INAMURA走れ』が日本劇作家協会新人戯曲賞の最終選考に残るなど、若くからその才能を認められていました。戯曲集『終着駅の向こうには…』を出版しているほか、『飯綱おろし』や『死刑執行人 ～山田浅右衛門とサンソン～』など、演劇専門誌『テアトロ』にも複数の作品が掲載されています。また、劇団ポプラによる全国公演作品『三年寝太郎物語』の脚本を手がけるなど、子どもから大人まで楽しめる作品も創作しています。宮沢賢治や石牟礼道子といった文学作品を構成・脚本として舞台化する仕事も多く手掛けています。

特に脚本家としては、NHK-FMのラジオドラマ番組「青春アドベンチャー」で多数の作品を書いています。あさのあつこの『バッテリー』、上橋菜穂子の『精霊の守り人』シリーズ、米原万里の『オリガ・モリソヴナの反語法』、今村翔吾の『羽州ぼろ鳶組』シリーズなど、人気小説の脚色を数多く担当し、聴く者を物語世界に引き込む手腕を発揮しました。2008年に放送されたNHK-FMの作品『残置物処理班』では、アジア太平洋放送連合（ABU）のラジオドラマ部門で最優秀賞を受賞しており、その脚本家としての質の高さは国際的にも評価されています。

俳優・演出家としての活動

俳優としても多数の舞台に出演しています。自身の主宰するプロジェクト作品のみならず、岡部企画、燐光群、桃唄309、劇団チャリT企画、TOKYOハンバーグなど、様々な劇団やプロデュースユニットの公演に客演し、幅広い役柄を演じています。特に岡部企画の『真田風雲録』では真田幸村役を務めるなど、主要な役どころも多く担当しています。

社会と向き合う演劇人として

丸尾聡は単に創作や実演に留まらず、社会との関わりを重視する演劇人でもあります。平和への願いを込めた「非戦を選ぶ演劇人の会」の実行委員として活動し、社会的なメッセージを発信しています。特にコロナ禍においては、劇作家協会のコロナ対策室長や演劇緊急支援プロジェクトの事務局を務めるなど、危機に瀕した文化芸術・演劇分野を支援するために奔走しました。また、2022年にはインボイス制度導入に反対する「インボイス制度を考える演劇人の会」に参加し、問題提起を行いました。

2020年に急逝した劇作家・別役実への追悼寄稿文が「ベストエッセイ2021」（日本文藝家協会編）に選ばれるなど、散文においても高い評価を受けています。多角的な視点と社会への関心を作品や活動に反映させ、日本の演劇界において重要な役割を果たしている人物です。

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