丸木俊

丸木俊（まるき とし）

生涯

丸木俊（本名：赤松俊）は、1912年北海道に生まれました。女子美術専門学校師範科西洋画部を卒業後、代用教員として勤務しました。その後、モスクワへの家庭教師としての赴任や、南洋群島への旅を経験し、国際的な視野を広げました。

1941年、同じく画家の丸木位里と結婚。第二次世界大戦中、広島で原爆の惨状を目の当たりにしたことが、彼女の芸術活動に大きな影響を与えました。戦後は、位里とともに「原爆の図」の制作に取り組み、その作品は世界各地で展示されました。また、絵本作家としても才能を発揮し、多くの作品を世に送り出しました。

晩年まで、社会問題に対する強い関心を持ち続け、平和と人権を訴える作品を制作し続けました。2000年、87歳でその生涯を閉じました。

画家としての活動

丸木俊は、洋画家として二科展への入選を皮切りに、美術文化協会展、前衛美術会展など、さまざまな展覧会に出品しました。しかし、彼女の最も重要な作品は、夫である丸木位里との共同制作による「原爆の図」でしょう。この連作は、原爆の悲劇を伝えるだけでなく、戦争の残酷さや人間の尊厳を問いかける、強いメッセージを持っています。

「原爆の図」は、1950年に発表されて以来、国内外で大きな反響を呼びました。日本国内での巡回展だけでなく、世界各地でも展示され、多くの人々に感銘を与えました。また、この作品は、原爆の悲劇を語り継ぐための重要な資料としても、歴史的な意義を持っています。

1973年には、広島市平和記念館（現広島市平和記念資料館）の依頼により、壁画《原爆―ひろしまの図》を制作。その後も、原爆だけでなく、さまざまな戦争による虐殺、公害、差別などの社会問題をテーマにした大作を描き続けました。

絵本作家としての活動

丸木俊は、絵本作家としても多くの作品を制作しました。その中でも特に有名なのが、絵本『ひろしまのピカ』です。この絵本は、原爆の悲惨さを子どもにもわかりやすく伝え、国内外で高く評価されています。

また、絵本『みなまた海のこえ』や『おきなわ島のこえ』など、社会問題をテーマにした作品も多く、それらは国内外で数々の賞を受賞しました。

丸木俊の絵本は、子どもたちに平和の大切さや、社会問題に対する関心を促す上で、非常に重要な役割を果たしています。

社会運動への参加

丸木俊は、単なる画家、絵本作家としてだけでなく、社会運動にも積極的に参加しました。日本共産党に入党し、党活動にも参加していましたが、党の方針転換に疑問を持ち、除名された経緯もあります。

「原爆の図」の展示活動は、被爆の悲惨さを世界に訴えるという、社会運動としての側面も持っていました。また、彼女は、公害問題や差別問題など、さまざまな社会問題にも積極的に関わり、それらの問題に対する人々の関心を高めるために、尽力しました。

丸木美術館

1967年には、埼玉県東松山市に原爆の図丸木美術館を開設。この美術館は、「原爆の図」を常設展示しており、丸木夫妻の平和への思いを伝える場所となっています。また、この美術館では、丸木夫妻の作品だけでなく、さまざまな社会問題をテーマにした展示やイベントも開催されており、地域の人々の文化的な交流の場としても、重要な役割を果たしています。

評価と影響

丸木俊は、その芸術作品を通じて、平和と人権の重要性を訴え続けました。彼女の作品は、国内外で高く評価され、多くの人々に影響を与えました。特に「原爆の図」は、戦争の悲惨さを後世に伝えるための、重要な資料としての役割も担っています。

彼女の作品は、今もなお多くの人々に感動を与え、平和への思いを新たにするきっかけとなっています。

代表的な作品

絵画
原爆の図
原爆―ひろしまの図
三国同盟から三里塚まで
絵本
ピカドン
ひろしまのピカ
みなまた海のこえ
おきなわ島のこえ

主要な受賞歴

ブラティスラヴァ世界[[絵本原画展]]　ゴールデンアップル賞
絵本にっぽん大賞
全米図書館協会ミルドレッド・バチェスター賞
ボストングローブ・ホーンブック賞
ジェーン・アダムズ平和賞
小学館絵画賞
講談社文化賞・絵本賞
赤い鳥文学賞特別賞
エイボン女性大賞
埼玉県民栄誉章
広島市市制功労者
朝日賞
ブルガリア美術協会の名誉会員､ソフィア名誉市民

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