丹野章

丹野章（たんの あきら）

丹野章は、1925年8月8日に東京都で生まれ、2015年8月5日に89歳で亡くなった日本の写真家です。戦後の日本写真界において、その才能と行動力で大きな足跡を残しました。

生涯

日本大学芸術学部写真学科を戦後1期生として卒業後、フリーランスの写真家として活動を開始しました。当時はフリーのカメラマンがまだ少なかった時代です。当初は舞台写真の分野で才能を発揮し、その後、新感覚の写真表現を追求するグループVIVOに参加し、その活動を通して独自のスタイルを確立しました。

丹野の作品は、東京都写真美術館、山口県立美術館、日本大学芸術学部、東京工芸大学などにコレクションとして収蔵されており、その芸術性が高く評価されています。また、写真の著作権保護にも強い関心を持ち、日本写真著作権協会（JPCA）の創設に大きく貢献しました。1970年には、著作権法改正に関して、日本写真家協会を代表して国会で意見を述べ、写真の著作権保護期間を公表後50年に延長する改正を導きました。この功績により、1999年には著作権法100年特別功労者として文部大臣から表彰されています。

丹野は、日本写真家協会常務理事、文化庁著作権審議会委員、日本リアリズム写真集団理事長など、数々の要職を歴任しました。また、日本写真家ユニオン理事長、日本写真家協会名誉会員、日本舞台写真家協会名誉会員としても活動し、後進の育成にも力を注ぎました。

内弟子には、写真家の谷口雅彦、映像キャメラマンの岡野秀俊がおり、彼らの活躍を通して、丹野の精神と技術が受け継がれています。

作風とテーマ

丹野の作風は、初期の舞台写真から、社会的なテーマを扱った作品へと変遷しました。サーカスをテーマにした作品や、三井三池争議、安保闘争など、当時の社会情勢を背景にした作品は、見る者に深い印象を与えます。炭鉱、軍事基地、沖縄、広島などを撮影した作品は、社会の矛盾や人間の生き様を浮き彫りにしています。また、「壬生狂言」や「日本の風土」など、日本の伝統や文化を捉えた作品も高く評価されています。

人となり

丹野は、何でも自分で作ることを好む人物でした。自宅の棚から暗室まで、手作りの品は数えきれません。中途半端なことを嫌い、徹底的にやり遂げる性格で、「やるならとことんやれ！」がモットーでした。お酒と和牛ステーキを愛しましたが、がんを患った際には、ゲルソン療法やアマニ油、大豆ミートなど、がんによいとされる食事を自ら徹底して実践し、病を克服しました。

映画やテレビドラマも好きで、特に朝の連続テレビ小説は欠かさず見ていました。亡くなった時期は、ドラマ「まれ」が放送されていた頃でした。また、母親が福島県二本松出身であったこともあり、蕎麦を好んでいました。

年譜

1949年：日本大学芸術科写真学科卒業
1951年：フリーランスとして活動開始
1957年：「10人の眼展」にてサーカスをテーマにした作品を発表
1959年：VIVO結成（1961年解散）
1971年：日本写真著作権協会（JPCA）創立に関わる
1972年～1992年：「壬生狂言」を撮影
1979年～1983年：「日本の風土」シリーズを撮影
1988年：日本リアリズム写真集団副理事長
1989年：日本リアリズム写真集団理事長（2001年まで）
1993年：「アジア写真著作権会議」に日本写真家協会から派遣
2001年：日本写真家ユニオン発足、代表理事を務める
2009年：キヤノンギャラリーSで写真展「丹野章の戦後」開催
2011年：「3.11を忘れない写真家の会」に参加

主な著書

『詩(ポエム)きものマイムの世界』松井朝子との共著 (1990年8月、偕成社)
『壬生狂言—丹野章写真集』(1992年5月、光陽出版社)
『日本で演じた世界のバレエ』(1995年5月、イメージハウス)
『撮る自由—肖像権の霧を晴らす』(2009年6月、本の泉社)

外部リンク

丹野 章 作品ポートフォリオ日本写真家ユニオンサイト内

丹野章は、その写真作品を通して社会を見つめ、著作権保護に尽力した、日本の写真界にとってかけがえのない存在です。彼の情熱と行動力は、後世に大きな影響を与え続けています。

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