久しぶりに俺は泣いたんだ

久しぶりに俺は泣いたんだ：長渕剛の転換期を象徴するロックナンバー

1985年3月30日、シンガーソングライター長渕剛の13枚目のシングル「久しぶりに俺は泣いたんだ」がリリースされました。作詞・作曲は長渕剛自身、編曲は瀬尾一三と長渕剛が共同で担当し、秋元康がスペシャルサンクスとしてクレジットされています。東芝EMIのエキスプレスレーベルから発売されたこの曲は、都会を舞台に、ERIKOという女性への想いを綴ったラブソングです。

音楽性：少年と大人の狭間、そしてロックへの覚醒

この曲は、少年と大人の狭間で葛藤する自身の心情を、遠距離恋愛中の恋人に想いを寄せる歌詞に置き換えて表現しています。大人になることに対する葛藤や、夢を見ていられたあの頃への憧憬は、続くシングル「勇次」にも通じるテーマです。

長渕剛はこの頃、それまでのフォークソング路線から、ロックテイストの強い楽曲制作にシフトしていました。「久しぶりに俺は泣いたんだ」も、前作に続くロックサウンド、バンドサウンドを基調とした楽曲となっています。音楽性の変化に伴い、彼の歌声はよりしゃがれたものになっていきました。

音楽情報サイト『CDジャーナル』では、この曲を「シンセやサックスなどを駆使した80年代ポップ・ロック・ナンバー。遠くに住む“ERIKO”という女性への愛を叫ぶ長渕剛らしいラブソング」と評しています。

リリースと収録作品：アルバム『HUNGRY』からの先行シングル

シングルは1985年3月30日にリリースされ、同年発売のアルバム『HUNGRY』にも収録されました。アルバムバージョンは、イントロが4小節延長され、エレキギターとシンセサイザーの音色が追加されたリミックスバージョンとなっています。

シングルB面には、1985年1月9日の日本武道館公演で収録されたライブ音源「巡恋歌」が収録されています。その後、ベストアルバム『SINGLES Vol.2 (1983〜1988)』にも収録されましたが、他のベストアルバムへの収録はありません。ライブ映像作品では、「Hungry Tour 1986 1.22.The 4Days LIVE」(ファンクラブ会員限定)に収録されています。

アートワークとライブパフォーマンス：ロックスタイルへの転換

このシングルから、長渕剛はトレードマークであった長髪を短髪にカットしました。ジャケット写真では革ジャン、ジーンズ、マイクスタンドというロック歌手らしいスタイルを確立し、バックバンドを従えてロックバンド風のライブパフォーマンスを行うようになりました。

1985年4月24日には、フジテレビ系音楽番組『夜のヒットスタジオDELUXE』に出演し、「久しぶりに俺は泣いたんだ」を披露しました。その後、『HUNGRY』のアルバムツアー「LIVE'85 - '86 HUNGRY」で演奏されましたが、その後のライブでは演奏されることはほとんどありませんでした。

批評とチャート成績：男臭いヴォーカルスタイルの確立

『CDジャーナル』は、この曲について「しゃがれ声による男臭いヴォーカル・スタイルがほぼ確立している」と評しています。

オリコンチャートでは最高位21位、登場回数8回を記録し、約4.4万枚のセールスを記録しました。

ミュージックビデオ：斬新な映像表現

長渕剛初のミュージックビデオも制作されました。内容は、口に猿轡をされ車で運ばれる長渕と、バンドメンバーと共に車上で歌う長渕の2種類の映像で構成された、当時としては斬新な作品となっています。

まとめ：新たなスタイルとサウンドが融合した代表曲

「久しぶりに俺は泣いたんだ」は、長渕剛の音楽性における転換期を象徴する楽曲です。ロックサウンドへの転換、短髪へのヘアスタイルチェンジ、そして初のミュージックビデオ制作など、様々な要素が融合したこの曲は、彼の代表曲の一つとして、今も多くのファンに愛されています。

もう一度検索