久国寺

久国寺（きゅうこくじ）

愛知県名古屋市北区大杉三丁目に静かに佇む曹洞宗の寺院、それが天長山 久国寺です。この寺院は、特に前衛芸術家として知られる岡本太郎氏が手掛けた個性的な梵鐘「歓喜の鐘」が境内にあることで、多くの人々の関心を集めています。

寺院の沿革

久国寺の歴史は、江戸時代の始まりに遡ります。慶長年間（1596年から1615年）、当時の住職であった長国守養によって開かれ、徳川家康公の守護仏を松平家の菩提寺であった法蔵寺から譲り受けたことに始まります。当初は楠山久国寺として別の場所に創建されました。その後、寛文3年（1662年）になり、安祥長盛和尚の手によって現在の地へと移されました。この移転は、名古屋城の築城に伴い、城の北東、すなわち鬼門の方角を鎮護するための重要な役割を担わせるためだったと伝えられています。また、この際に山号も、名古屋城本丸の天長峰にちなんで天長山と改称されました。このように、久国寺は名古屋の発展と深く結びついた歴史を持つ寺院と言えます。

境内の特色

久国寺の境内には、長い歴史の中で培われた厳かな雰囲気と共に、いくつかの unique な見どころがあります。中でも最も注目されるのは、前述の「歓喜の鐘」ですが、それだけではありません。太平洋戦争で亡くなった方々の魂を慰めるために建立された護国観音像も安置されています。この観音像は、滋賀県甲賀市信楽町を中心に活動した彫刻家、浅野祥雲氏の作品であり、その独特の表現で戦没者への追悼の念が表現されています。訪れる人々に平和の尊さについて静かに語りかけているかのようです。

また、久国寺は霊場としての側面も持ち合わせています。昭和30年頃には、名古屋市観光協会の後援を得て、大名古屋十二支霊場の一つに数えられました。子年生まれの人々の守り本尊である観世音菩薩を祀る恵当寺として、古くから地域の人々に親しまれ、多くの参拝者を受け入れています。

「歓喜の鐘」について

久国寺のシンボルであり、多くの美術愛好家や岡本太郎ファンが訪れるきっかけとなっている「歓喜の鐘」は、1965年（昭和40年）に制作されました。「芸術は爆発だ！」のフレーズで一世を風靡した岡本太郎氏が手掛けたこの梵鐘は、従来の鐘のイメージを覆す、力強く、そしてどこかユーモラスな表情を持っています。制作に至る経緯としては、当時の住職が知人の紹介を通じて岡本氏に直接制作を依頼したことから実現したと言われています。

この「歓喜の鐘」を制作するにあたっては、小型の試作品が五体作られました。これらの試作品もまた、岡本氏の創作プロセスを示す貴重な資料となっています。そのうち一体は、現在、東京都港区にある岡本太郎氏のアトリエ兼住居を改装した岡本太郎記念館に収蔵されており、氏の芸術世界の一端を今に伝えています。また、岡本氏と生前親交が深かった作家であり政治家でもあった石原慎太郎氏にも、この試作品の一つが贈られたとされています。久国寺の「歓喜の鐘」は、単なる宗教的な道具としてだけでなく、public art としても高い価値を持つ作品であり、訪れる人々に強い印象を与えています。

交通案内

久国寺へのアクセスは、公共交通機関を利用するのが便利です。名古屋鉄道瀬戸線の清水駅から歩いておよそ6分という、比較的アクセスしやすい場所に位置しています。

関連項目

* 太陽の鐘 - 岡本太郎氏が制作したもう一つの著名な梵鐘です。こちらは群馬県前橋市に設置されており、「歓喜の鐘」と比較してみるのも興味深いでしょう。

久国寺は、歴史的な重みと現代アートの斬新さが共存する unique な寺院として、名古屋を訪れる人々にとって魅力的なスポットの一つとなっています。

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