久多

久多（くた）について

久多（くた）は、京都府京都市左京区の最北部に位置する地区であり、過去には愛宕郡久多村として知られていました。この地域は、川合町、下の町、宮の町、中の町、上の町という五つの集落で構成されています。特に茅葺屋根の民家が多く残っている点が特徴ですが、近年では過疎化が進行しています。

自然環境

久多は北緯35度26分、東経135度87分の位置にあり、標高800〜900メートルの山々に囲まれているため、自然環境が豊かです。夏は比較的涼しい気候ですが、冬は寒さが厳しく、豪雪に見舞われることもあります。この地域を流れる久多川は安曇川水系に属しており、上流には「一の瀧」や「馬尾の瀧」といった滝があります。

地域内には三国岳や経ヶ岳、鎌倉山などの山々もあり、それぞれが美しい景観を提供しています。特に、八丁平の峰床山は標高970メートルという近畿地方における珍しい高層湿原のスポットです。また、久多の大杉は樹高約40メートル、幹周約6.6メートルの大木で、1987年に京都市の天然記念物として指定されています。

特異な視点

久多の一部では良好な気候条件が整えば、富士山の頂を見ることができるため、京都府でも珍しい、富士山が見える地域として知られています。

歴史

久多の歴史は平安時代以前から木材の供給地として発展してきました。一説には平家の落人がこの地に逃れ、定住したとも言われています。江戸時代には近江朽木藩の所領となり、明治以降は京都府の管轄下に置かれました。そして1949年に京都市左京区に合併されました。

産業

従来、久多は杉を中心とした木材の供給や炭の生産で生計を立てていましたが、高度経済成長期に外材の輸入が増加したため、林業中心の産業形態は変化が求められました。その結果、農作物として甘藷の栽培や山菜加工が始まり、さらにアウトドア施設としてのキャンプ場も設立されました。

伝統行事

久多では花笠踊をはじめ、多くの伝統行事が行われており、国や京都市の文化財として指定されています。これらの行事は地域の文化や歴史を深く反映しています。

花笠踊

花笠踊は豊作を祈願する祭りで、毎年8月24日に行われます。室町時代に京で流行したものがルーツで、1972年には国の選択無形民俗文化財に選ばれました。特徴は美しく飾られた花笠を使用することで、地元の男性たちが毎年新しい花笠を作る点にも注目が集まっています。

松上げ

また、宮の町では「チャチャンコ」と呼ばれる松上げの行事が8月23日に行われ、高さ約10メートルの「柱松」が設置され、祭りのクライマックスには逆円錐形の傘に手松明を投げ入れます。これもまた1984年に京都市の無形民俗文化財に登録されました。

山の神・お弓

1月3日には志古淵神社で山の神信仰の祭事、「お弓」が行われ、氏子が特別な履物を履いて乗り出します。この行事も1998年に無形民俗文化財に登録されています。

その他の行事

また、8月14日には地蔵盆の行事で川原に地蔵を作り、翌日には供え物をしてお参りを行う「川地蔵」があるなど、地域の人々の信仰や風習が色濃く残っています。

交通

久多はアクセスが難しいため、公共交通機関の利用が困難ですが、バスを利用する手段や自家用車でのアクセスが可能です。道路は冬季には閉鎖されることもあるため、通行条件に注意が必要です。

施設

地域内にはキャンプ場や流域の自然活用を目的とした施設が存在し、訪れる人々に自然と触れ合う機会を提供しています。これらの施設は活発なアウトドア活動を通じて、久多の魅力を発信しています。

久多はその美しい自然環境と独自の文化、歴史が交錯する場所であり、古からの伝統と新しい試みが共存している地域です。

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