久慈町 (岩手県)

久慈町（くじまち）

かつて岩手県南九戸郡、後に九戸郡に所属していた自治体、久慈町（くじまち）について記述する。明治22年（1889年）4月1日、町村制施行に伴い誕生し、昭和29年（1954年）11月3日に周辺町村と合併して廃止されるまで、約65年間にわたり存在した。現在の行政区域としては、岩手県久慈市のうち、一般的に「久慈」と呼ばれる中心市街地およびそれに隣接する地域にあたる。なお、昭和29年の合併によって発足した現在の久慈市と、ここで述べる旧久慈町は、自治体としては異なる存在であることに留意が必要である。

地理

久慈町は岩手県の北東部に位置し、太平洋に面していた。町域の東側には美しい海岸線が広がり、久慈湾に臨んでいた。町内には、岩手県北部の主要河川である久慈川が流れ、また長内川も町域を潤していた。これらの河川は、町の景観を形成するとともに、古くから人々の生活や産業を支えてきた。沿岸部には久慈港があり、海上交通の要衝としても機能していた。

歴史

久慈町の行政区域は、明治22年（1889年）4月1日、町村制の施行によって定められた。この時、下大川目村、門前村、長久寺村、および長内村の一部（字細谷、字柏崎）の区域が統合され、南九戸郡久慈町が発足した。
その後、明治30年（1897年）4月1日には、郡制の施行に伴う郡の再編により、所属郡が南九戸郡から九戸郡へと変更された。これにより、久慈町は九戸郡の一員として歩みを進めることとなる。
町は近代日本の発展とともに、地域の中心地としての役割を担い発展を遂げた。商業や交通の要衝として栄える一方で、周囲の農村部との連携も深めていった。
昭和の大合併期を迎えると、行政の効率化や広域連携の必要性が高まった。そして、昭和29年（1954年）11月3日、久慈町は隣接する長内町、宇部村、大川目村、侍浜村、夏井村、山根村と合併し、新たな自治体である久慈市が誕生した。この合併により、旧久慈町はその歴史的役割を終え、廃止された。旧町域はそのまま新設された久慈市の一部となった。

交通・港湾

久慈町は、地域の交通結節点としての役割も果たしていた。鉄道路線としては、当時、日本国有鉄道（国鉄）の八戸線が町内を通り、久慈駅が設置されていた。久慈駅は、町の玄関口として人流・物流の拠点となっていた。なお、現在の沿岸部を縦断する三陸鉄道北リアス線（現・リアス線の一部）は、久慈町が存在した当時はまだ開業していなかった。
道路網としては、主要幹線道路である国道45号が町内を通過していた。また、岩手県道久慈沼宮内線（現在の国道281号）も整備されており、内陸部との連絡路として重要であった。
港湾については、久慈湾に面した久慈港が町の産業や物流を支える上で重要な役割を担っていた。港は漁業の拠点であるとともに、沿岸航路や他地域との物資輸送にも利用されていた。

参考文献

この記述にあたり、『角川日本地名大辞典 3 岩手県』を参照した。

関連項目

* 岩手県の廃止市町村一覧

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