久留島秀三郎

久留島 秀三郎

1888年9月11日に京都府で生まれた久留島秀三郎は、多岐にわたる分野で顕著な足跡を残した人物です。旧姓は中野秀三郎。実兄に中野忠八がいました。鉱山技術の専門家である工学博士としての一面を持ちながら、多くの企業の経営を担う財界人、そして作家としても活躍しました。また、日本のボーイスカウト運動においても重要な役割を果たしています。

学業と初期のキャリア

秀三郎は旧制第三高等学校を経て、九州帝国大学工科大学採鉱学科で専門知識を修得しました。卒業後、1914年12月から約1年半の兵役を経験。その後、1916年9月からは農商務省鉱山局札幌鉱務署で行政の仕事に携わりました。

日本のボーイスカウト黎明期に関与

農商務省在籍中の1916年には、日本のボーイスカウトによる初の野営活動に関わっています。「京都少年義勇軍」の少年たちと共に、琵琶湖畔の雄松崎（現在の滋賀県志賀町）で歴史的なキャンプを実施。現在、この地には『日本ボーイスカウト初野営の地』として記念碑が建立されています。

満州での経営手腕と久留島家との縁

1920年からの17年間、秀三郎は満州を活動の拠点とし、様々な会社の役員として経営に深く関わりました。この満州滞在中の出来事として特筆されるのが、久留島武彦家との縁組です。1924年にデンマークで開催された第2回世界ジャンボリーからの帰国船上で、実兄の中野忠八とボーイスカウトの創始者の一人である久留島武彦の間で、秀三郎と武彦の一人娘との結婚、そして秀三郎の久留島家への養子入りが話し合われ、縁談が決定したと伝えられています。

財界における重責

1937年に満州から帰国後、秀三郎は昭和鉱業株式会社の社長に就任し、1963年までその職を務めました（その後は相談役）。さらに1946年には同和鉱業株式会社の取締役社長も兼任するなど、日本の鉱業界において指導的な立場を担いました。その他にも、日本鉱業協会の会長も務めています。

公的機関での活動

鉱業界での活躍に加え、秀三郎は公的な分野でも重要な役職を歴任しました。1956年には日本国有鉄道の理事、また松永安左ヱ門を議長とする産業計画会議の委員としても招集されています。

ボーイスカウトへの貢献

久留島家との縁もあり、秀三郎は日本のボーイスカウト運動に深く関わっていきます。1950年にはボーイスカウト日本連盟の理事となり、1954年には理事長に就任。さらに1966年には第5代総長として連盟の最高位に立ちました。総長在任中には、1971年に静岡県で開催された第13回世界ジャンボリーの後、「Boy Scout of Japan」だった連盟の公式英語名称を「Boy Scout of Nippon」と変更することを主張し、これが連盟内に定着するのに貢献しました（なお、この表記は2001年に再び変更されています）。また、神奈川県横浜市の「こどもの国」に、ボーイスカウト活動に尽力した無名の人々を称える「無名のスカウト戦士（Unknown Soldier）」のトーテムポール・彫像を建立する活動を推進するなど、組織の発展と精神の継承に尽力しました。

作家としての活動

多忙な実業活動の傍ら、秀三郎は作家としても多くの著作を残しています。国内外の旅や鉱業に関するものなど、幅広いテーマで執筆しました。

主な著書：

『珈琲を啜りながら ― 南米紀行』（1931年）
『馬賊を語る』（1939年）
『印度・印度支那』（1940年）
『飛行機とバスの窓から』（1950年）
『空気の液化とその利用』(1950年)
『北米東西南北』（1951年）
『つれづれに』(1957年)
『鉱物資源の完全活用 ― 鉱物資源の完全活用に関する工業的研究』(1957年)
* 『偲ぶ草 ― 久留島武彦』 (1960年)

このように、久留島秀三郎は鉱山技師としての専門知識を基盤に、財界、公的機関、そしてボーイスカウト運動と、様々な分野で指導的な役割を果たし、1970年9月22日にその生涯を終えました。その多角的な活動は、近代日本の産業界や社会活動の発展に寄与するところが大きかったと言えるでしょう。

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