久米宏のTVスクランブル

久米宏のTVスクランブル：視聴率と社会現象を巻き込んだ情報番組

『久米宏のTVスクランブル』は、1982年10月から1985年3月まで日本テレビ系列で放送された生放送の情報バラエティ番組です。司会を務めたのは久米宏氏で、毎週日曜日の夜8時から8時54分までの放送でした。

画期的な番組構成と高い評価

この番組の最大の特徴は、その斬新な構成です。当時としては珍しかったENG（Electronic News Gathering）技術を駆使し、短く編集された複数のビデオ映像をテンポ良く紹介していく「マガジン形式」を採用しました。およそ10個のコーナーが3分程度の短い尺で展開され、視聴者を引き込むスピード感溢れる構成が話題を呼びました。

その革新的な試みは高く評価され、1983年には第15回テレビ大賞優秀番組賞、1984年には第1回ATP賞最優秀賞を受賞。久米氏自身も個人賞を受賞するなど、そのクオリティの高さが広く認められました。横浜市の放送ライブラリーには、初回放送分の映像が残されています。

久米宏と横山やすしの絶妙な掛け合いと、番組降板劇

久米氏のパートナーとして番組を盛り上げたのが、漫才コンビ「横山やすし・西川きよし」の横山やすし氏でした。久米氏たっての希望で起用されたやすし氏との掛け合いは、番組の人気要因の一つとなりました。しかし、やすし氏の生放送中の暴言や欠席など、数々のトラブルも発生しました。これらのトラブルは、やすし氏の多忙なスケジュールや、飲酒問題に起因していたとされています。

やすし氏の問題行動には、漫才師としての天才的な才能の裏に隠された焦燥感があったとも指摘されています。1984年11月、やすし氏は番組を降板。以降は、毎回ゲストコメンテーターを招く形式に変更されました。ゲストには、立川談志氏、清水國明氏といった著名な芸能人のほか、渡辺美智雄氏、森喜朗氏といった政治家も出演しました。

『ニュースステーション』への影響と番組終了

番組は高い視聴率を維持していましたが、1985年3月に終了しました。これは、番組の人気継続を望む制作会社と、久米氏の「充電期間」の必要性という相反する意向によるものでした。

しかし、この「充電期間」は、実は久米氏が翌年から開始する『ニュースステーション』（テレビ朝日系列）の準備期間だったのです。『TVスクランブル』で培った構成や内容は、『ニュースステーション』にも大きく影響を与え、特に初期の「金曜版」では『TVスクランブル』のカラーを色濃く受け継いだコーナーが多く放送されていました。

最終回は、南伸坊氏をゲストに迎え、過去のVTRや未放送シーンなどを放送。エンディングでは、増上寺大梵鐘前でテーマ曲が演奏され、広島県厳島近辺の空撮映像で幕を閉じました。

多彩な人気コーナー

『TVスクランブル』には、数多くの個性的なコーナーがありました。

人間ウォッチング: バードウォッチングの手法を応用し、人々の行動を観察する企画。
こんなに違う: 幼稚園と保育所、カメラ量販店と街のカメラ屋さんなど、異なるものを比較する企画。
なんでもベスト5: 様々なランキングを発表する企画。
ザッツ・マネー: 世の中の事象を金額に換算する企画。
限定情報: 特定の人だけに役立つ情報を提供する企画。
兆しコーナー: ある事象の兆候を紹介する企画。
今週のカタログ: 特定の種類のものを一挙に見せる企画。
今週の赤ちゃん: 動物の赤ちゃんの映像を紹介する人気企画。
日本全国美人妻: 各地の美人妻を紹介する企画。
この道はどこへ行く道: 日本の将来を憂慮させるような事象をリポートする企画。
道徳の時間: 道徳の教科書の内容や現実の出来事を題材に視聴者の意見を募る企画。
除夜の鐘難視聴撲滅運動: 金属供出で鐘を撤去された寺に新しい鐘をプレゼントするプロジェクト。
テレビのない家族: 家庭からテレビを撤去して生活の様子を観察する企画。
夢のハリセンおじさん: マナー違反をする人にハリセンで懲らしめる（再現）企画。
何が悪いのよオバサン: 迷惑行為を繰り返す女性を通して反面教師を学ぶ企画。
今週の予言: 「風が吹けば桶屋が儲かる」的に、様々な予言を紹介する企画。
小さな学校: 山間部の小学校の子供たちの生活を追ったドキュメンタリー企画。
日本一周・海岸線の空撮: エンディングで日本の海岸線を空撮する企画。
* 選挙特番: 選挙の日に放送時間を拡大して放送する特番。

これらのコーナーは、社会問題からエンターテインメントまで幅広く網羅し、視聴者の関心を集めました。

まとめ

『久米宏のTVスクランブル』は、斬新な番組構成と個性的なコーナーの数々で視聴者の心をつかみ、高い人気を誇りました。横山やすし氏との騒動や、番組終了、そして『ニュースステーション』への影響など、多くのエピソードを残したこの番組は、日本のテレビ史に大きな足跡を残しました。その革新的な試みは、後の情報番組にも大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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