久米島航空通信施設

久米島航空通信施設は、かつて沖縄県島尻郡久米島町に所在したアメリカ軍の施設でした。施設番号はFAC6279が付与されていました。この施設は1972年から翌年にかけて日本の航空自衛隊へ移管され、現在は航空自衛隊那覇基地久米島分屯基地の一部として機能しています。

施設の歴史は第二次世界大戦中の日本海軍に遡ります。1943年には上田森（現在の久米島町上江洲にあたると考えられます）に海軍根拠地隊通信隊が組織されました。翌年には鹿山正兵曹長が隊長として着任し、久米島北部の宇江城岳、通称ウフクビリ山の山頂周辺に、住民を動員して通信施設や兵舎、防空壕などが構築されました。終戦後も久米島に潜伏していた鹿山隊は、一部住民への虐殺事件を引き起こした後、1945年9月7日に投降しました。

終戦後、1945年に米軍が沖縄を占領すると同時に、宇江城岳にあった日本海軍通信隊の施設跡や兵舎跡などが軍用地として接収されました。1949年頃から、この地に米軍による新たな通信施設が整備されます。事務所、宿舎、倉庫などの建物に加え、進入道路、軍港、通信用レーダーといった重要な設備が建設されました。久米島航空通信施設は、主に航空警戒管制サイトとしての機能を担っていました。

施設の面積は、1972年時点で約23万700平方メートルに及びました。施設の所在地は当時の具志川村と仲里村にまたがっていました。宇江城岳周辺は、宇江城城跡に近く、また周辺の山林地帯は久米島町の貴重な水源である白瀬川の集水域にもあたる地域です。

1970年代に入ると、施設の日本側への返還・移管が進められます。1971年には約4万5000平方メートルが返還されました。さらに、1972年11月2日には約2000平方メートルが返還されると共に自衛隊に移管され、翌1973年5月14日には残りの約23万2000平方メートルが返還され、自衛隊への移管が完了しました。

施設が自衛隊に移管された後の1973年5月20日、防衛庁は米軍のレーダーサイト施設を買い取り、航空自衛隊久米島分屯基地が開設されました。ここでは第54警戒群が新編され、防空警戒管制施設として運用が開始されました。久米島分屯基地は、航空自衛隊那覇基地の管理下にあります。使用部隊は南西航空警戒管制隊第54警戒隊で、使用目的は防空警戒管制です。分屯基地の面積は約21万8000平方メートルです。また、分屯基地とは別に、久米島町字仲泊には久米島分屯基地仲泊宿舎（面積約6000平方メートル）が設けられています。

久米島分屯基地内の一部区域は、現在も米軍が共同使用しています。これは1975年9月19日に、日米地位協定に基づき、鳥島射爆撃場の管制施設として久米島分屯基地の建物約3100平方メートルが米軍に提供されたことに始まります。その後、1982年に追加提供が行われ、現在に至っています。共同使用しているのは米空軍第18航空団で、鳥島射爆撃場の管制施設として使用しており、共同使用面積は430平方メートルとなっています。

久米島には、この久米島航空通信施設（現在の久米島分屯基地）とは別に、島の東部に米軍の久米島射爆撃場が存在し、こちらは現在も米軍による空対地射爆撃場として使用されています。久米島航空通信施設から久米島分屯基地への変遷は、戦前から現在に至る久米島の防衛・通信施設の歴史を示す重要な事例と言えます。

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