乙一

乙一（おついち）

乙一（本名：安達寛高）は、1978年福岡県生まれの日本の小説家、映画監督、脚本家です。日本推理作家協会、本格ミステリ作家クラブの会員でもあります。山白朝子、中田永一という別名義でも作品を発表しており、多彩な才能を発揮しています。

生い立ちと学生時代

福岡県田主丸町（現在の久留米市）で生まれた乙一は、幼少期から肥満体型で、周囲のからかいからゲームに没頭する日々を送っていました。しかし、14歳でダイエットに成功し、中学校ではクラス委員に選ばれるなど、変化を遂げました。久留米工業高等専門学校に進学したものの、この時期を「人生で一番鬱屈した時代」と語っています。しかし、15歳の時に読んだライトノベル『スレイヤーズ』をきっかけに、読書の楽しさを知り、様々なジャンルの小説に触れるようになりました。特に、本格ミステリや叙述トリックに魅了され、我孫子武丸、綾辻行人、島田荘司などの作品に影響を受けました。

作家デビューとキャリア

16歳から小説を書き始め、1996年に『夏と花火と私の死体』でジャンプ小説大賞を受賞し、17歳で作家デビューを果たしました。審査員であった栗本薫に強く推されたとされています。1999年に高専を卒業後、豊橋技術科学大学に編入し、SF研究会に所属。2002年に大学卒業後、『GOTH リストカット事件』で本格ミステリ大賞を受賞しました。その後、東京へ移り住み、2006年には編集者・ライターの押井友絵と結婚しています。2010年には第一子が誕生しています。

作風と別名義

初期の乙一作品は、奇抜なアイデアの短編や、心温まるライトノベルが中心でしたが、『GOTH リストカット事件』はミステリー小説として高い評価を得ました。作風はホラー寄りの「黒乙一」と、切ないストーリーの「白乙一」に分けられることもあります。2005年頃から、山白朝子として怪談専門誌『幽』、中田永一として恋愛小説アンソロジーや専門誌『Feel Love』で執筆活動を開始しました。これらの別名義は当初伏せられていましたが、2011年に乙一自身がTwitterで公表しました。また、越前魔太郎名義での執筆も行っています。本名である安達寛高名義では、自主映画制作も行っており、監督としても活動しています。乙一はストーリー展開を先に決め、それに合わせてキャラクターを設定する手法を用い、映画の脚本作りの技術を取り入れています。特に、物語の中間で転換点を迎えるミッドポイントの手法を多用しています。妻の押井友絵は、乙一の制作姿勢を「作品が形になっていくのがとにかく楽しくてやっている感じ」と評しています。

ライトノベルと乙一

乙一は、ライトノベルというジャンルが、出版業界において特殊な位置付けをされていることを認識していました。デビュー当時、ライトノベルには賞がなかったこともあり、ミステリー小説『GOTH』をライトノベルとして出版することで、ライトノベル読者にもミステリーに触れてもらおうと考えました。しかし、後に一般書形式に変更しており、「ライトノベルのままでは手にとってもらえない客層がいるという事実を覆せなかった」と語っています。

人物像

アニメ、ゲーム、漫画、映画鑑賞を趣味とし、特にアンドレイ・タルコフスキー監督の映画を敬愛しています。スタジオジブリ作品のファンでもあり、『天空の城ラピュタ』がお気に入りです。藤子・F・不二雄作品にも影響を受けており、『ドラえもん』の道具が自身の作品に登場することもあります。ラジオ好きとしても知られており、伊集院光と爆笑問題のラジオ番組を愛聴しています。また、ダンスゲーム『Dance Dance Revolution』を愛好しており、ダイエットにも役立ったと述べています。作家仲間では、定金伸治、松原真琴、佐藤友哉、西尾維新、滝本竜彦らと親交があります。

家族

妻の押井友絵は映画ライターであり、乙一監督の映画にも出演しています。義父は映画監督の押井守です。

受賞歴

『夏と花火と私の死体』 第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞（1996年）
『GOTH リストカット事件』 第3回本格ミステリ大賞（2003年）
『くちびるに歌を』(中田永一名義)第61回小学館児童出版文化賞（2012年）

主な作品

乙一は、小説以外にも、映画、漫画、ドラマCDなど、様々なメディアで作品を発表しています。

小説

『夏と花火と私の死体』
『GOTH リストカット事件』
『ZOO』
『失はれる物語』
『くちびるに歌を』（中田永一名義）
『宗像くんと万年筆事件』（中田永一名義）

映画

『ZOO』
『暗いところで待ち合わせ』
『きみにしか聞こえない』
『シライサン』
『サマーゴースト』
『エクセプション』

漫画

『はじめ』
『GOTH』
『きみにしか聞こえない』
『くちびるに歌を』
『山羊座の友人』

関連情報

乙一の公式ウェブサイトや、SNSアカウントでは、最新の情報をチェックすることができます。

Web Otsuichi: https://www.shueisha.co.jp/otsuichi/
X（旧Twitter）: @adachihirotaka

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